2013年5月25日土曜日

錦織圭とレッド・クレー(赤土) [テニス]




「レッド・クレー(赤土)」のコートは滑る。

このタイプのコートは、ヨーロッパの選手には当たり前でも、日本人選手には特殊な環境。

「日本人選手にとって、レッド・クレー(赤土)は『最も難しいサーフィス(表面)』と言われる。球足は遅く、ボールは高く跳ねる。独特のフットワークも要求される(Number誌)」



マドリード(スペイン)で行われた大会は、このレッド・クレー(赤土)。日本人選手には不利と考えられた。

ところが、このコートで日本人「錦織圭(にしこり・けい)」は大金星を挙げた。世界ランキング3位の「フェデラー」に土をつけたのだ(日本人がつけられっぱなしだった赤土を!)。







「彼に勝つなんて…。しばらくは、この喜びに浸りたい」と、錦織は汗も乾ききらぬ記者会見で、その大きな喜びを口にした。

思えば2年前(2011)、スイス室内の決勝でフェデラーと対戦した錦織は、完敗だった…。



そして今回、マドリードでついにリベンジを果たした。「フェデラーは自分の憧れの選手。彼を倒すことが目標だった」と錦織は喜んだ。

負けたフェデラーも、「錦織のほうが良いプレーをした。強かった方が勝ったんだ」と、錦織のプレーを素直に称えた。

「強いサーブを持たない錦織は、クレーでは相手の強烈なリターンに苦労していたが、コースと球種をうまく打ち分け、フェデラーに自由に返球させなかった(Number誌)」



現在、世界ランキングNo.1は「ジョコビッチ」。

そのジョコビッチにも「圭(錦織)は、世界で最も才能のある選手だ」と言わしめている。

ただ、こう注意もした。「圭の敵は唯一、怪我だけだ!」







錦織圭は、わずか18歳という若さでツアー初優勝を成し遂げるほどに強さを持っていた。だが、2009年にヒジを痛めてメスを入れ、1年間のツアー欠場を余儀なくされてしまう。

あの時点で、普通の選手はカムバックできない。「ランキングを失ってから上位に返り咲きできる選手はほとんどいない」と松岡修造も心配した。

それでも、錦織は戻って来た。さらなる強さを持って!



現在、世界ランクトップ10以内にいる選手の平均身長は187cm。それに対して錦織圭は178cmと、10cm近く小柄である。

「そんな錦織が、時には5時間位上にも及ぶ試合で、約30km、ダッシュ・アンド・ストップを繰り返すことができる怪物のような選手を相手に戦わなくてはならない(松岡修造)」

世界で戦うテニス・プレーヤーは、年間約10ヶ月の海外遠征を強いられ、身体を休める時間さえないという。



さらに悪いことには、マドリードのようなレッド・クレー(赤土)のコートでは、とくに怪我をしやすい。

クレー・コートで幾度となく怪我に泣いたクルム伊達公子などは、最近、クレー・コートでの試合を意図的に避けているほどである。



日本人の苦手とするクレー・コート。だが逆に、このコートで勝てなければ世界トップ10は狙えない。

現在、世界ランク4位の「ナダル」は「クレーの殺し屋」とも呼ばれるほどクレー・コートに強く、今季は38戦中36勝という強烈な強さを発揮している。

ナダルをはじめとするスペイン勢にとって、クレー・コートは当たり前。そのサーフェス(表面)で育ってきたのだから。







錦織圭の世界ランキングは、現在15位。

世界トップ10に入るには、どうしてもクレー・コートでも勝てるような選手になれなければならない。

この点、レッド・クレー(赤土)のマドリードで、世界ランク3位のフェデラーを打ち破ったことは、世界トップ10への壁がグッと低くなったことを意味する。



そして、今月(5月)末から開催される全仏オープンもまた「レッド・クレー(赤土)」。

今季は一味違う錦織圭。

11歳の時から錦織を知っているという松岡修造は、「『錦織圭、世界のトップ10入り!』という見出しが今年8月までに紙面を飾る可能性は十分にある」と語っている。







(了)






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怪我とクレーコート。クルム伊達公子 [テニス]

「挫折」と松岡修造



ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 6/13号 [雑誌]
「世界トップ10を目指す錦織圭が戦う『敵』」
「フェデラー撃破の錦織圭 全仏の赤土にも手応え」

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