2013年3月22日金曜日

敗れた侍ジャパン。疑惑の重盗(WBC)。



その瞬間、一瞬声を失った。

まさか、あんな痛恨のミスが出るなんて…。



WBC準決勝、日本vsプエルトリコ、8回裏。

0対3で負けていた日本の攻撃は、残すところあと2回。

「当然、ファンだけでなく日本ベンチも逆転劇を期待して、この8回裏を迎えたはずだった(Number誌)」



ワン・アウトから鳥谷敬が三塁打。井端のタイムリーで1点を返した日本。

さらに内川聖一のヒットで、ランナーは1、2塁。そして迎えるバッターは4番の阿部慎之助。

「いやが上にも、逆転ムードは高まった」。



逆転の舞台は整っていた。

バッターボックスに立った阿部慎之助は、今大会当たっている。この場面でホームランが出れば、一打逆転だ。



初球はファール。

そして2球目、一塁ランナー内川が走った!

盗塁だ!



当然、二塁ランナー井端も同時にスタート切った。ダブルスチール(重盗)だ……と思ったその瞬間、二塁の井端はすぐに走るのを止めて塁に戻ってしまった。

それでも、一塁ランナー内川はそれを知らずに、顔を下に向けたまま二塁に猛進。ランナーのいる二塁へ…。



顔を上げた内川は、一瞬何が起こったのか分からなかった。

2人のランナーが2塁を挟むように鉢合わせ。そして、そのまま、内川はタッチアウト。

「膨らみかけた逆転の風船は、これで一気に萎んでしまった(Number誌)」



「走塁ミス?」

それにしても、まさか強打者・阿部がいる場面で、ダブルスチール(重盗)とは…。

たとえピッチャーのロメロはクイックが下手だとはいえ、キャッチャーはメジャーでも強肩で鳴るモリーナだ。そう易々と盗塁を許すキャッチャーではない。



いったい、コーチからはどんなサインが出ていたのか?

「必ず盗塁(重盗)しろ。タイミングは任せる」

それが、一塁コーチャー緒方耕一のサインだったという。



「もちろん、打席には阿部がいるので、カウントが不利になる前の『できるだけ早いタイミング』で走るに越したことはない(Number誌)」

だから、一塁の内川も、二塁の井端も初球からいくつもりでタイミングを計っていた。

「初球ファールの2球目、ここで走ろうとしたが、二塁の井端はスタートが悪かったために断念。だが、一塁の内川は、止まった井端を見ずに走ってしまったわけだ(Number誌)」



「僕のワンプレーで、全てを終わらせてしまいました…」

試合後の内川は、涙に濡れていた。

「飛び出した自分が悪いんです…。すべて僕の責任です…」



この試合、日本はプエルトリコに負けた(1対3)。

WBC3連覇は夢と消えた…。



「3連覇を自分が止めたような気がして申し訳ないです…」

「戦犯」とされた内川は、全責任をひとりで背負うようなコメントを残した…。



さて、この内川のプレーについては、さまざまな意見が飛び交っている。その多くは非難の嵐だ。

そんな嵐が吹き荒れる中、イチローのコメントばかりは思いやりに満ちていた。



「あの場面で、あのスタートができるのは凄い」と、イチローはまず内川の思い切りの良さを讃える。

二塁ランナーの井端が引き返したのを見て、内川も戻るべきだったという指摘に対しては、「ほとんどの捕手に対しては、見ながら戻れる。でも、モリーナには無理」と一蹴。

プエルトリコのモリーナは、大リーグ屈指の強肩キャッチャー。たとえイチローとて、そうそう塁を進められるものではない。



イチローの持論はこうだ。

「走塁は野球で最も難しい技術」

日米通算651盗塁のイチローが、そう言うのである。



イチローには、重圧の中で塁に立つランナーの気持ちが痛いほど分かるのだろう。

そのイチローが、あの場面での内川の心情を思いやるのだ。

いわんや、余人は…。








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ソース:Number
「足で勝って、足で負けたジャパン。あの8回裏の重盗シーン、全真相」
「イチロー『当然』WBC侍の走者判断重盗」

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