2014年6月7日土曜日

西洋の胸、日本の肚




「あぁ、西洋では『みぞおちから下』は、全部足か!」

たとえばバレエの世界では、みぞおちを境に背中が「higher back」と「lower back」とに分けられる。そして、下半身とされるlower back(みぞおちから下)は脚部ヒザの動きと連動することになる。



かくのごとく、一般的に西洋の動きでは「胸」が重視され、佇まい自体、上へ上へ持ち上がる形が良しとされる。

一方、日本の武術においては胸よりも「肚(丹田)」が大切にされる。ところが西洋には、重心を落してやるハラはない。

——端的な例として、日本の甲冑では「胴」で腹回りを防御するが、西洋甲冑は「ブレストプレート(胸甲板)」で胸を守る。日本の甲冑にはブレストプレートに対応するパーツはない(月刊秘伝)。



解剖学的にみれば確かに、腸腰筋群がはじまるのはみぞおちから下であり、それが下肢のはじまりである。

この点、lower backという感覚はまことに正しいことになる(西洋人の脚が長くなったのは、こうした感覚ゆえか?)。








ところで、バレエにはクラシックとモダンがある(クラシックバレエでは「周辺からの動き」が核になり、モダンバレエでは「中心からの動き」が核となる)。

そのモダンバレエ、意外にも日本の武術と動きが似通っているという。



たとえば胸の動き。

日本武術では「胸を抜く」「胸を含む」「含胸抜背」などとよく言われるが、モダンバレエでも同じように「胸を沈み込ませる」「胸骨を中に入れる」などと表現する。胸を入れるほど、大きく動けるようになる。

「胸は中! 肩は上げない!」

武道場でもバレエでも、同じような声がひびく。










(了)






出典:DVD付き 月刊 秘伝 2014年 05月号 [雑誌]
「胸骨の操作 〜内なる動き〜 」



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