2013年6月16日日曜日
「飛ばないボール」から「飛ぶボール」へ [野球]
日本野球の「飛ぶボール」
The Wall Street Journal「日本のプロ野球では今年、ホームランが『続出』しており、昨年の同時期より『60%』増加している。これは『うますぎる話』だ」
「今年はボールが本当によく飛ぶ。バットに当たるボールの『音』と『飛び方』が違う」と、楽天の「嶋基宏」捕手は4月の時点で話していた。
横浜DeNAの「ブランコ」選手は、その4月に月間最多記録となる「14本のホームラン」を放っていた。
嶋基宏選手は「たぶんボールが変わったのかもしれない…」とも言っていた。
だがその時は「何も変わっていない」とNPB(日本野球機構)は否定し、「打者たちが統一球に慣れてきたのだ」と話していた。
じつはすでに「極秘裏」にボールが変更されていたのだが…。
そして6月11日、「ついに白状した」。
The Wall Street Journal「ボール・メーカーである『ミズノ』と密かに取り決めを交わし、公式ボールが『よく飛ぶように』細工していたのだ」
2011年以前を振り返れば、個々のチームが「自身の球団のボール」を選択してた。
だが、そうした慣習ではWBC(ワールド・ベースボール・クラシックス)のような「国際試合では不利になる」との指摘から、日本のプロ野球界は、「アメリカのボールに近い独自の基準」を設定した。
それが「統一球」であった。
だが、この統一球は「退屈」だった。
じつに「飛ばない」。必然的にホームラン数は激減した。
The Wall Street Journal「打者は『飛ばないボール』にいらだち、ホームランを熱望するファンは、退屈で居眠りするだけに終わった」
統一球が導入された2011年のホームラン数は「わずか939本」。前年の1605本から急減したのだった(前年比42%減)。
「ホームランが少なくなって退屈だ」と、13歳の大阪の中学生までが産経新聞に対して不満をもらした。
じつはアメリカでもそんな「飛ばない時代」があった。
それは「The dead-ball(デッドボール=飛ばないボール)」と呼ばれた時代で、1900年代はじめの頃である。ホームランが少なく野球界全体が低調であった。
それが「飛ぶボール」に転換されたのは1910年頃。
The Wall Street Journal「ゴムを芯にしたボールから、ゴムとコルクを芯にした『攻撃型ボール』になった」
時代は下り、1990年代末から2010年代初めまで、アメリカ大リーグは「劇的なホームラン・ブーム」となったことがある。
スポーツ・ジャーナリストたちは疑った。「ボールが飛ぶように、MLB(大リーグ機構)が細工をしたのではないか…?」と。
だがMLB(大リーグ機構)はその疑惑を否定し、「ホームラン急増の原因は選手の『ステロイド(筋肉増強剤)』使用にある」と結論づけた。
さて、日本に戻ろう。
日本の野球界は長年「人気の低下」に苦しんでいる。観客動員数は、この10年間で「10%減少」した。
加えて、「brawn drain(筋肉流出=頭脳流出のもじり)」にも苦しめられる。ダルビッシュ有やイチローといった花形選手がアメリカへと流れていってしまったのだ。
活気を取り戻そうとNPB(日本野球機構)は、いろいろと手を打った。
たとえば、試合の進行を早め、平均試合時間を「3時間未満」に短縮することを約束した(2007年の平均は3時間14分だった)。
また「パッション」や「ハニーズ」という名の「陽気なチアダンス・チーム」が試合を盛り上げ、音楽のボリュームも上がった。
「しかし、ボール自体が『飛ばない』となると、ダンサーたちが手助けできることはあまりない(The Wall Street Journal)」
統一球の極秘変更のきっかけとなったのは、昨年の定例検査でボールの一部が「契約の仕様よりも飛ばない」ことを発見したことだったという。
具体的には、ボールの「反発係数」が下限値「0.4134」を下回っていたのである。そこでNPB(日本野球機構)はメーカー・ミズノに対して「もう少し飛ぶように」と統一球の微調整を依頼した。
ミズノは「ボールの芯の内側にあるゴムを変えた」と述べている。
そしてこの度、今年の統一球の「反発係数」が「0.415〜0.416の間」と判明。
その「秘密の微調整」が、今シーズンの「ホームラン増加」の立役者となったわけだ。
プロ野球のボールについて研究している溝田武人教授(福岡工業大学)は、こう説明する。
「反発係数が0.01上がると、ボールの初速が2%上がる。その結果ホームラン性の当たりでは、これまで100m飛んでいた打球が、102m飛ぶことになる(NHK)」
この「2mの差」が、今季のホームランを「60%」も増やしているということだ。
NPB(日本野球機構)のコミッショナー「加藤良三」氏は、「知らなかった」「隠蔽するつもりはなかった」と述べているが、Yahooのネット調査では92.2%の人々が「辞任」を求めている。
加藤氏が辞任するにせよ続投するにせよ、今シーズンのボールは「もう変わらない」。NPBの規則によって「シーズン途中の変更は認められない」。
すなわち、野球ファンは少なくとも今シーズンいっぱいは「ホームランの急増」が楽しめる、ということである。
ボールが飛べば、チアリーダーたちはもっと試合を盛り上げてくれることだろう。
(了)
関連記事:
「あと一人」、完全試合を逃した人々のストーリー[野球]
アメリカの大リーガーは「給料ドロボウ」?
野球選手の名産地「プエルトリコ」。WBC
ソース:The Wall Street Journal
「飛ぶボール、極秘変更に『反則』の声―日本プロ野球」
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿