2013年6月30日日曜日

日本人の知らない世界「9秒台」。桐生祥秀にかかる期待 [陸上]



日本の17歳が出した100m「10秒01」という衝撃的タイム。

15年間止まっていた針を動かそうとしている「高校生」がいる。



おなじみとなった「紺のランニングにピンクのランパン」を身につけた坊主頭、「桐生祥秀(きりゅう・よしひで)」。

「まだ成長途上にある高校3年生はタイムだけでなく、30m過ぎからの爆発的な加速、中盤のスムーズな走り、そして後半のストライドの伸びでも観客の度肝を抜く(Number誌)」

否が応でも、アジア人初となる「9秒台」誕生の期待は高まる。










「今年中に『9秒台』が出るのは100%間違いない」

そう言い切るのは、自身「10秒00」の記録を持つ日本人「伊東浩司」。伊東は1998年、重心移動を重視する独自の走りによって、日本人の知らなかった「9秒の世界」を目前にした。

9秒台に「ギリギリまで迫った」のは伊東ばかりではない。朝原宣治(10秒02)も、末續慎吾(10秒03)もそうだ。



だが、伊東の「10秒00」から15年間、9秒台のカベを破った日本人はまだ誰もいない。あたかも時計の針が止まってしまったかのように。

「末續も、浩司さんや僕もギリギリまで迫っていた。しかも1回ではなく、何回もチャンスがあって、いつ出てもおかしくなかったんです。それでも日本人は9秒台に届きませんでした」と、朝原宣治(現・大阪ガスコーチ)は語る。

世界で初めて9秒台の記録が出たのは、メキシコ五輪(1968)。それから45年経つものの、アジア人はまだその世界に足を踏み入れていないのである。






そんな日本に突然飛び出した「10秒01」。

洛南高校3年生の桐生祥秀は、「ここまで来たからには、9秒台は一番最初に出したい」と、活きのいい言葉を吐く。

「目標は『9秒96』。パッと頭の中に浮かんだ数字です」と桐生は言う。



日本のスーパー高校生の名は、いまや世界の陸上界にも広く知られている。

「10秒01というタイムに加え、『スプリント技術の高さ』に外国人選手や関係者らは舌を巻く(Number誌)」

9秒58の世界記録をもつ「ウサイン・ボルト(ジャマイカ)」は、桐生を「10年に一人の逸材」と褒め称える。

今季世界最高の9秒86を出している「タイソン・ゲイ(アメリカ)」は、「(桐生の)レースの動画を見て驚いた。17歳とは思えないね」とコメント。



シドニー五輪100m銀メダリストで現在解説者の「アト・ボルドン(トリニダード・トバゴ)」は、桐生をこう絶賛する。

「ジュニア選手は記録と技術が伴わないことが多いが、桐生の技術は素晴らしい。17歳という年齢にばかり焦点が当てられているが、スタートから加速部分の技術はシニア選手にも引けをとらない」



世界も大注目の桐生祥秀は、世界最高峰のダイヤモンド・リーグから「招待」を受けた。

同リーグに参戦するのは、世界記録保持者の「ウサイン・ボルト」、そして「タイソン・ゲイ」など世界の一流スプリンターたちばかりである。

「過去も日本人選手はダイヤモンド・リーグの試合に出場しているが、『招待による出場』はおそらく初めて(Number誌)」






日本人スプリンターたちが、綿々と追い続けてきた「9秒台」の夢。

17歳の桐生祥秀が「10秒01」なら、21歳の山縣亮太は「10秒07」、24歳の江里口匡史も「10秒07」。

「今の日本の短距離陣の勢いは、誰かが9秒台に入れば、その後に続々と選手が続いていきそうな勢いだ(Number誌)」



いままで「壁」と言われ続けてきた「10秒」。

いまや、そこから頭を出そうとしている若者たちが意気盛んである。

「夢が夢でなくなった時、10秒が壁と言われた記憶も人々の頭の中から消えていくのだろう(Number誌)」

さあ、日本人の知らない世界へ…!













(了)






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タイム計測、「誤差」とのせめぎあい。



ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 7/11号 [雑誌]
「『10秒の壁』を打ち破れ」
「日本一足の速い高校生、陸上世界最高峰リーグへ挑む」

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