女子アイスホッケー日本代表。
ゴールキーパーの中奥梓は、ケンタッキー(KFC)、
フォワードの坂上智子は、宅配ピザ、
同じくフォワードの平野由佳は、派遣社員。
日本代表選手たちは、合宿や海外遠征があるたびに長期休暇を取らなければならない。しかし残念ながら、そのような都合のいい条件で採用してくれる企業はほとんど存在していない。
それゆえ彼女らは、時間の自由のきくアルバイトなどに勤しむより他にない。
そんな厳しい経済環境の中でも、彼女らはソチ五輪出場を決めた。
それは長野オリンピック以来16年ぶり、自力では初めての切符であった。
思えば、過去3大会、アイスホッケー女子は「あと一歩」のところで苦杯を舐めさせられ続けてきていた。
ソルトレークシティ五輪の最終予選は、「あと1勝」足りなかった。
トリノ五輪の最終予選は、「あと1点」足りなかった。
バンクーバー五輪の最終予選は、中国との全勝対決に惜敗した(0−2)…。
昼間は働かなければならない日本代表の面々。
必然、所属チームの練習は夜間になる。遅い時は、夜10時から始まり、深夜12時まで汗を流す。
それでも、彼女らは臥薪嘗胆、「あと一歩」のために精進に精進を重ねてきた。
そして遂に手に入れた、オリンピックへの切符。
まさに「悲願」とは、このことか…。
今回の女子アイスホッケーに幸いしたのは、新たに加わったアンダー世代(18歳以下)の高校生3人(床亜矢可・浮田留衣・青木亜優子)のレベルがじつに高かったことだ。
「悲願の歴史」を知らぬ高校生たちは、じつにノビノビとプレーしていた。多くのベテランが第一線から退いた穴は、彼女たちの若い力が見事に塞いでみせ、そして高めてみせたのだった。
ソチ五輪に出場を決めたのは、日本を含め8カ国。
世界ランク11位の日本は、その8ヵ国中、最下位のランキングだ。
それでも彼女たちは、やってくれるだろう。
15年前の長野オリンピックでは、5戦全敗だった日本代表。
今度こそ、新たな悲願の「オリンピック初勝利」に向けて、邁進してくれるに違いない…!
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ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 3/7号 [雑誌]
「女子アイスホッケー、ソチへ。 悲願達成の舞台裏」
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