「あんなのラグビーだ」
いや、それはサッカーだ。ただ他のチームより少々「腕」を使うだけで…。
サッカーで腕を使えるのは、なにもキーパーばかりではない。全選手が腕を使える…、そう、それが「スローイン」である。
そのチームは、イングランド・プレミアリーグ「ストーク・シティ」。
「腕」に覚えのある背番号24番「ロリー・デラップ」は、「50点近くをスローインから演出している」。
オフサイドの適用されないスローインは、強豪チームの「ハイテク防御」を、これでもかと「原始的なパニック」に陥れるのだ。
英国のジャーナリズムは、このデラップを「人間発射台」と呼ぶ。
彼のスローインの飛距離は38m。もっと遠くへ投げる選手はいるが、上へ弧を描いてしまうため、守りやすくなってしまう。ところが、デラップのスローインは「低空飛行」で遠くへ伸びるロングスロー。チャンスを生み出すライナー性のスローインなのだ。
「助走は4歩、リリース時の角度は20度。バックスピンをかけることで、ボールはフラットな角度をしばらく保つ(ガーディアン紙)」
ストーク・シティというチームは、バルセロナやマンチェスターUなどの華やかなチームとは「対照的」に、鉱山の泥臭さを醸し出す。「鉱山に食い込む鉄杭、ワインでなくビール。それがストークだ」。
そのストークを率いるのは指導歴20年、鋼鉄の将「トニー・ピューリス」。フルマラソンも走り切れば、悪天候のキリマンジャロへの登頂も果たす。
「勝てばブリリアント。もし、負けても世界が終わるわけではない」
彼がそう言うのなら、そうである。彼の心の中は、いつも「百戦百勝」だ。
「持たざる者が、持てる者を倒す」。
それがストーク・シティの醍醐味。「それも独自の方法で、だ」。
人間発射台の放つ脅威のロングスローは、持てる者たちを弄ぶ。これが「貧富の差を最短で埋める攻撃法」なのである。
しかし、このところ、人間発射台・デロップの出場機会は限られている。
「肩を壊している」というのだ。サッカー選手だというのに…。
それでも心配ご無用。すでに後継の人間発射台が「文句なしのスローイン」を放ち始めている。24歳の新鋭、ライアン・ショットは「デラップ・マークⅡ」としてその威力を発揮し始めているのである。
「あれもこれも許される人など世にマレだ。
みんな、そうやって生きている。
ストーク・シティのように…」
ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 10/25号
「ロングスロー万歳! ストーク・シティ」
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