川崎フロンターレというサッカーチーム(Jリーグ)は「風呂(フロ)」と無縁ではない。
なにせ、チーム名が「川崎”フロ”ンターレ」だ。
このしょうもないオヤジギャクが、実はこのチームの広報「いっしょに”おフロんた〜れ”」となっている。
その仕掛け人のオヤジは「天野春果」氏。川崎フロンターレでプロモーション部の部長を務める人物。その彼が一躍世間の注目を集めたのは去年(2011)12月、大ヒット風呂マンガ「テルマエ・ロマエ」とのタイアップ企画だった。
その企画のため、マンガの出版元であるコミックビームに「フロへの熱い思い」を必死に伝えた天野氏。
「Jリーグで『フロ』という文字が入っているのは、40クラブ中、うちだけです! だから、御社に来ないと逆に失礼かと思いまして!」
ドカーンと大受けした出版社の担当。すぐに作者のヤマザキマリさんに連絡し、「いっしょに銭湯業界を救いましょう!」ということになった。
こうしてトントン拍子で話が進んだ結果、サッカー日本代表の「中村憲剛(なかむら・けんご)」選手は、風呂マンガの主人公よろしく、古代ローマの衣装に扮することになる…。
この企画の大ヒットにより、サッカーチームのみならず銭湯業界も恩恵に浸ることとなり、天野氏は「銭湯業界の救世主」とまでもてはやされるようになった。
「今年もアレを頼むよ!」
すでに3年目を迎える「いっしょに”おフロんた〜れ”」は、銭湯業界も大いに期待するところとなっている。
天野氏がアイディアをひり出そうとする時、彼は自宅の湯船に浸かりながら、次々と頭の中に「オヤジギャグ」を巡らせるのだという。
「アフロ…? フロリダ…?」
いいアイディアが出なければ、アイウエオ順にシラミ潰し。「イフロ、ウフロ、エフロ、オフロ……」
「ひらめき」は突然訪れた。
自分の小さな子供が大好きなNHKの教育番組「みいつけた!」に、「オフロスキー」というシュールなキャラクターを見つけたのだ。
「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!」
即座にYouTubeでオフロスキーを検索。Twitterでも数十秒ごとに話題になっていた。もはや直感は「確信」となった。
さっそくNHKに出向いた天野氏。彼にはNHKはムリだろうという先入観があったというが、オフロスキーという圧倒的な存在はそんなものをフッ飛ばしてくれていた。
「銭湯をいっしょに救いませんか?」
「え!?」。キョトンとするNHKの担当者。そこに畳み掛ける天野氏。「『イクフロ』です。イクメン(育児を行う男性)同様、男性の育児参加も促せます」。
幸運だったのは、オフロスキーを演じる俳優の「小林顕作(こばやし・けんさく)」氏が「大のサッカー好き」だったということだ。彼は中学高校でサッカーをプレーしていた。
さらに幸運だったのは、サッカー日本代表の中村憲剛選手が「オフロスキーの大ファン」だったことだった。憲剛選手は「やりましょう!」と快諾。
こうして中村憲剛は牛のような水色の衣装に身をつつみ、「オフロ”ン”スキー」となった。ちなみに、本家のオフロスキー(小林顕作)の衣装はピンク色である。
「日本は景気が悪いといいますが、それを言い訳にしたら何も進まなくなってしまいます。不景気でもディズニーランドには人が集まるんですよ」
天野氏は語る。「小石を一個ずつ投げ込んでいれば、川の流れを堰き止めることもできるのです。結局は積み重ねです」
「テルマエ・ロマエ」、「オフロスキー」といった企画は天野氏にとっては大事な小石のひとつ一つ。そして、それらの小石は、資金難にあえぐJリーグのチームに酸素を与えるかもしれないし、煙の途絶えた銭湯に新たな薪を提供することになるのかもしれない。
そんな天野氏のオヤジギャグは止まらない。
「もし、観客全員が『アフロ』のカツラをかぶってYMCAを踊ったら?」
「ニューヨークで入浴(にゅうよく)。ウルトラクイズみたいにイベントをやったら?」
第3弾が発表されたばかりであるが、もう来年の第4弾も楽しみだ。
きっと天野氏の心の中は「こども心」と「オヤジギャグ」が一緒に遊び回っているのだろう…。そんな小石が日本にはもっともっと必要なのかもしれない…。
ソース:Number web
「川崎フロンターレ名物部長が企てた漫画『テルマエ・ロマエ』とのコラボ」