From:
Number(ナンバー)952号
近藤篤
スーパーラグビー見聞録
サンウルブズ 南半球 岩を砕く激闘
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「『スリーハンドレッド』って映画、見たことあります?」
「あります」
観たことのない人に簡単に説明すると、この映画はギリシアのスパルタに攻め込んできたペルシア軍の大軍を、わずか300人のスパルタ兵士たちが食い止めようとする話で、歴史上実際にあった「テルモピュライの闘い」というペルシア戦争中の史実をモチーフに制作されている。
映画全編を通じて、ものすごい数の兵士が血を噴きあげながら命を落とし、最後はその300人のスパルタ兵士も1人を残し全員が惨殺される。
「ぼくは、あの300人にちかい感覚で戦っています。毎回、とんでもない相手に戦いを挑んで。…今のところ、ペルシアの王様の頬にかすり傷すらつけられていないことは事実なんですけど、ほらやっぱり勝てないじゃん、って周りの人にさらっと言われると、なんかわかってもらえてないなあ、ってちょっとだけ思ったりもします(ラグビー、サンウルブズ、浅原)」
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ハリケーンズの広報部長と一瞬目が合ったので、握手の手をさしのべると、彼は微笑みながら、こんな単語を口にした。
「ペイシェンス」
忍耐?
「そう、君たちにはペイシェンスが必要だ。そうすれば、いつかサンウルブズもハリケーンズのようになれるさ」
ハリケーンズはチームの創立が1996年、初優勝は2016年、つまり優勝までに実に20年の歳月を費やした。サンウルブズは創立してまだ3年足らず。
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選手が全員ロッカールームに戻ってくると、まずジェレミー・ジョセフHCが口を開き簡単な挨拶をする。
「今日の君たちを自分は誇りに思う」
そう選手たちを褒め称えた後、ジェレミーはこう付け加えた。
「とにかくこうやって、岩が砕けるまで拳を打ち続けるしかないんだ」
そう彼らは岩に向かってひたすら拳を叩き込んでくる。そして誰もが知ってるように、岩というものはとても硬く、そしてそう簡単には砕けない。とくにニュージーランドの岩は。
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「うまくいってる時、人は自分のやっていることを信じ続けられる。でも、うまくいかないときでも信じ続けられるかどうか、それが本当に大事なことだし、皆には今やっていることを信じ続けていってほしい。そうすれば、絶対に結果はついてくるから」
なんという素敵な言葉だろう。この南アフリカ出身の、まるで精巧なロボットのような肉体をもつ心優しい男は、こう続けて、手にもった缶ビールを一気に飲み干した。
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