「100%の出来ではなかったけれど、久しぶりの優勝でうれしい」
確かに、フィギュアスケート中国杯での優勝は、浅田真央にとって久しぶりの優勝だった。
昨季は彼女にとって「つらいシーズン」となってしまった。
最愛の母を失う悲劇に見舞われ、GPファイナルを棄権。その後の何個かの大会には律儀に出場したものの、「なかなか気持ちが入らなかった」。
「一時はスケートを辞めることも考えました…」
そんな消沈の浅田真央を見たローリー・ニコル(振付師)は、「再び人生とスケートを取り戻せるような元気の出る音楽」を使おうと決意した。それが今季のSP(ショート・プログラム)の選曲、ガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム」。そして、エキシビジョンナンバー「メリーポピンズ」。
「マオの軽やかさ、純粋さ、愛らしい躍動感などを引き出したかった」とローリー・ニコル。
その結果、中国杯でSPを終えた浅田は、大きな笑顔を見せた。「マオは太陽が昇ったように輝いた」。
そして、最終的にはSP2位からの逆転優勝。
彼女の顔からは昨シーズンの思いつめたような表情が消え、一つの新境地に到達したようでもあった。GP通算9勝は日本人最多記録でもあった。
新生・真央は、着氷率が安定しなかった派手な3アクセル(3回転)を思い切って外し、表現力をより重視するようになった。
久しぶりに優勝した中国杯では、その表現力が高く評価され、5コンポーネンツに8点台が並んだ。今シーズン女子で8点台のコンポーネンツを出したのは、アシュリー・ワグナーと浅田真央だけである(コンポーネンツとは表現力などを評価するポイント)。
「今は自分も目指すものが見つかっています」
そう語る浅田真央の表情は生き生きと明るく、滑る喜びを取り戻したかのようであった。
今日(11月23日)から開催されているNHK杯、トップ3位内に入ればGPファイナル進出が決まる。
その華麗なる戦いは、大いに期待できるであろう。SPではさっそくのトップだ!
ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 12/6号
「浅田真央を再生させた振付師の決断」
0 件のコメント:
コメントを投稿