2013年6月19日水曜日

大金星! ラグビー日本代表 vs ウェールズ



サッカー日本代表がブラジル戦へ向け、士気を高めていたちょうどその頃、「ラグビー」日本代表は「歴史的な大金星」を挙げていた。

「6月15日、2年連続ヨーロッパ王者の『ウェールズ』代表を、対戦13戦目にして初めて打ち破った」



「レッド・ドラゴンズ」とも呼ばれるラグビー・ウェールズ代表。黄金期の70年代には「赤い悪魔」として恐れられた。

現在、「北半球最強」と言われるウェールズ。その最強決定戦である「欧州6カ国対抗」を2012年、2013年と立て続けに連覇している。

世界ランキングは、ウェールズ5位、日本15位。



今回の対戦は「テストマッチ」。すなわち、国同士の「真剣勝負」とお互いが認めた大一番。

最高気温30℃、湿度70%と、ヨーロッパ勢には慣れない蒸し暑さ。それに加え、ウェールズ代表の主力15人は全英代表ともいえる「ブリテッシュ&アイリッシュライオンズ」でオーストラリアに遠征中。そのため、日本代表と対戦したメンバーは若手が中心となっていた。

それでも、相手は全員がプロ選手。この「大金星」に、日本代表エディー監督は、「最高の日、歴史をつくった」と胸を張った。







それまでの日本は、絶好調というわけではなく、先月(5月)下旬に行われたトンガ戦(17対23)、フィジー戦(8対22)に連敗していた。

そんな折、「頼れる越境者2人」が日本代表に合流。「堀江翔太」と「田中史朗」。

この2人は、世界ランク上位3カ国が覇を競うプロリーグ「スーパー・ラグビー」のプロ選手として活躍中だった。野球で言えば「アメリカ・メジャーリーグ」、サッカーで言えば「イングランド・プレミアリーグ」に相当する世界最高レベルに揉まれた2人である。

日本代表エディー監督は、「日本のベスト・プレイヤー」と2人を評する。



日本代表に合流した堀江と田中は、すぐさまチームの問題点や課題に気がついた。

HO(フッカー)堀江翔太は、「攻撃時のフォワードの立ち位置が狭くなっている」と指摘し、「それを広くして、アングル(角度)をつけて走り込むこと」をアドバイス。生命線となるのは「ボールの継続」、敗戦したトンガ戦やフィジー戦では、ボール・キャリアがプレッシャーを受けていた。



 



SH(スクラムハーフ)田中史朗は、「高校や大学の部活のような上下関係はフィールドの中ではいらない。遠慮することはダメだ」と力説。日本社会は上の人に楯突かないが、監督のエディーにだって反発していいんだ、と訴えた。

田中は、世界最高リーグに参戦して「ラグビーへの取り組み方が変わった」と語る。










そして迎えたウェールズ代表との第1戦(6月8日)。

パスの基軸となるSH(スクラムハーフ)田中史朗の好ジャッジによって、ボールが継続するシーンは増えていた。その結果、トライ数でウェールズを上回る。

しかし、ウェールズの攻撃の激しさに日本は反則を繰り返してしまったため、PG(ペナルティ・ゴール)を5つ決められ、「18対22」の4点差で惜敗。

それでも、欧州王者を「あと一歩」のところまで追い詰めていた。



続く第2戦には、否が応にも「歴史的勝利」への期待が高まる。

時は6月15日、場所はラグビーの聖地「秩父宮」。相手は北半球王者ウェールズ。すべてが申し分なかった。

歴史的瞬間を目の当たりにしようと、秩父宮に押し寄せたファンの数は2万人を超えた(2万1,062人)。国内のテストマッチとしては最多の動員数である。



うなるような声援。

日本代表は序盤、ウェールズの猛攻にさらされるも、それに耐え切る。田中はボールを渡さない相手選手に突っかかっていくなど、世界に揉まれたたくましさを見せる。

前半は、フルバック五郎丸歩の決めた2度のPG(ペナルティ・ゴール)によって「6対3」とリードで折り返す。

だが後半早々(開始4分)、ウェールズに1トライを許してしまい、逆転されてしまう(6対8)。



日本代表も負けてはいられない。

「SH(スクラムハーフ)田中史朗は、相手の穴を即座に見つけ、的確なパスワークで安定したボールを味方に供給。166cmの小さな身体が強豪ウェールズを手玉にとった(Number誌)」

いつもはニュージーランドやオーストラリアで身長200cm近い巨漢を相手にしているだけあって、この日はむしろ「余裕の球さばき」であった。



「スペースを見つけて、なるべく速く投げた」と田中。

田中のボールさばきは、ワールドクラスのスピード。そのボールを連続攻撃に活かす日本代表。それが後半2つのトライに結びついた(ウィング、ブロードハースト)。

第1戦では、後半に逆転されたが、この第2戦にあっては、後半の逆転に成功。



後半のこり10秒。

日本の大量リードに、秩父宮の大観衆2万人は、すでに勝利を確信していた。

場内に響き渡る大観衆の「カウント・ダウン」

「3、2、1…」



「日本が、歴史的大金星だ!」

その瞬間、日本のフィフティーンは高らかに拳を突き上げた。



結果は「23対8」。

あのウェールズ相手に「完勝」である。

この日、明らかに「新たな歴史」が生まれたのだ!



勝利の瞬間、田中は「なかなか勝てなくて…」と号泣。

彼が南半球の最強リーグに渡ったのは、先のW杯で一勝も上げられなかった日本代表に「勝利」をもたらす責任を感じてのことでもあった。2019年には自国開催のW杯が待っている。

五郎丸歩は、この勝利を「奇跡ではなく、実力です」と言い切った。確かに、ラグビー日本代表はウェールズ戦で「過去にないような逞しさ」を見せ、世界の強豪とも渡り合えることを示した。









勝利の美酒に酔う、歴史をつくったラグビー日本代表。

「酔っ払って知らぬ間に眠っていた」と田中は言う。



だが、「本当の美酒」はまだまだ先である。

ウェールズに勝利したその翌日、田中は練習場で厳しい顔をしていた。

「ウェールズに勝ったことで甘えが出てしまうと、次のカナダ、アメリカ戦に影響する。ここで負けたらウェールズに勝った価値が減ってしまう」と、田中は先を見据える。

「166cmと、メンバー中で最も小さな田中は、人一倍厳しい顔つきでトレーニング・バイクを漕いでいる姿が印象的であった(Number誌)」



「勝ち続けなければ、意味がない」

田中史朗は「ここがスタート」と何度も強調する。

次のW杯は2015年イングランド、そして2019年には、いよいよ日本。

新たな歴史は、まだ幕を開けたばかりなのだ…!






(了)






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ソース:Number
「日本、ウェールズ破る新伝説!/ラグビー」

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