2013年4月6日土曜日

本田圭佑の「神隠し」



「この約一ヶ月、本田はまるで『神隠し』にあったかのようだった(Number誌)」

あまりにも突然の「離脱」。

2月13日の練習を最後に、本田圭佑(ほんだ・けいすけ)は姿を消していた。



その最後の練習風景。

「本田の動きはいつものように力強く、シュートがバーに当たると『オォ!』と雄叫びをあげる。まるで野獣だ(Number誌)」

ところが、強靭なはずの本田はその後、「両膝に手をついて下を向いていた」。そして、チームドクターと真剣に言葉を交わすとそのまま、チームメイトより先に帰ってしまった。

予想外の行動だった。それ以来、本田は「消えた」のだった。



そして迎えた、W杯最終予選、ヨルダン戦(3月26日)。

日本代表の中に、エース本田圭佑はいなかった。

この試合、日本が勝てば(引き分けでも)W杯出場の決まる大一番だった。しかし本田は忽然と姿を消していた。



「右ヒザか? それとも体調不良か?」

本田離脱の理由について、情報は錯綜する。

「日本では『ケガ』、ロシアでは『体調不良』と、離脱の理由がまっぷたつに割れていた(Number誌)」



本田本人の公式HPには、「右膝のチェックと古傷である足首の痛みのため」にバルセロナへ行った、と記してあった(2月23日)。バルセロナといえば、2011年に右ヒザ半月板の手術を行った場所だった。

しかし、ロシアの広報はそれを全否定していた。「断言するが、ケガではない」と。インフルエンザと報道された「体調不良」からコンディションを100%戻すための「特別なオフ」を取ったのだ、と。



いずれにせよ、ヨルダン戦で本田は不在。

結果は日本の敗戦(1対2)。

「本田不在の大きさを感じさせる試合となった」。



日本の最初の失点はセットプレー、ヨルダンのコーナーキックからだった。

「セットプレーの守備で本田がいなかったことが響いてしまった(Number誌)」

ちなみに、W杯最終予選における日本の全4失点を振り返ると、オーストラリア戦のPK、オマーン戦の直接FK、そして今回ヨルダン戦のCKと、「4失点のうち、3失点がセットプレーによるものだった(同誌)」。



「選手同士の距離感」も定まらなかった。

「ザッケローニ監督は、本田を中心にチームを作ってきたため、どうしても選手同士の距離が『身体をぶつけられてもボールをキープできる』本田仕様になっていた(Number誌)」

敗戦後、キャプテンの長谷部誠もこんなことを言っていた。

「ヤット(遠藤保仁)と僕のダブルボランチと、圭佑(本田)のトライアングルは、長い間やっているから、自然と『最適な距離感』ができているのだろう」

そのトライアングルの頂点にあった本田がいなかったことにより、「まわりの選手が無難なプレーに終始してしまった(Number誌)」



「やはり日本にはこの男が必要だ」

ヨルダン戦、その不在によって、本田の存在感はなお一層際立った。

「彼は今、どこにいて、何に苦しんでいるのか?」



粉雪の舞うモスクワ。

本田は突然、レストランの分厚い木製ドアを開けて、現れた…!

「黒いコートに、黒いニットをかぶり、少し店内を見回して、カーテンで仕切られた個室に滑りこむ(Number誌)」

そこは、本田の行きつけのレストランであった。



「体調不良という先入観があるからなのか、(本田は)少し息苦しそうに見えた。それでも、いつも練習場で会うのと変わらない『ドンと構えた本田』だった(Number誌)」

「一つだけ質問していい?」、そう訊く記者に対して、本田はしばらく考えてから、「次にしとこか」と短く答えた。

「時間にして約1分」、それが神隠しから現れた最初の本田圭佑だった。



その5日後、一本の電話が鳴り響く。

「本田が帰国します!」

それはヨルダン戦キックオフの約11時間前。その情報通り、本田は成田空港に現れた。「左足首の検査」が帰国の目的だと事務所は言っていた。



一方のロシア、CSKAのスルツキ監督はついに具体的な症状を明かした。

「本田は風邪をひいて、それがなかなか治らず、そうしたら腸の状態が良くないことがわかった。本人の希望で、日本で検査と治療を受けることになった」

またも、日本とロシアで情報は交錯しているが、ヨルダン戦の夜、本田は明らかに日本にはいたのであった。



6月にはW杯の2連戦が控える日本代表。

そのピッチに背番号4の姿はあるのだろうか?

その期待は今回、否が応にも高まった…!







(了)



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ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 4/18号 [雑誌]
「本田圭佑不在、その真実を求めて」

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