2013年5月25日土曜日
80歳で見たエベレストからの光景。三浦雄一郎
その瞬間、拍手が湧き起こった。
三浦雄一郎さん80歳、エベレスト完登。
「ヒマラヤが眼下に見えて、美しいです」
見上げても見えないほどの高い山を、上から見下ろす。
それは、その頂に立ったものだけに見える景色。
現地の気温は氷点下15℃。
風は不思議とほとんどなかったという。
若い頃にはスキーを志した三浦雄一郎さん。
エベレストの登山ルートをスキーで滑り降りたこともある。37歳の時だ。その記録映画「エベレストを滑った男」は、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した。
冒険心旺盛な三浦雄一郎は、「世界7大陸の最高峰すべてをスキーで滑る」という目標を掲げ、53歳の時にそれを達成した。途中、南極大陸で雪崩に巻き込まれながらも(奇跡的に生還)。
「エベレストに登る」という新たな挑戦は、60代半ばで決意した。
だがその頃、標高500m程度の低山にさえろくに登れないほど、三浦雄一郎さんの体力は衰えてしまっていたという。
それでも一念発起。身体を一から鍛え直した。そして70歳。本当にエベレストの登頂を成し遂げてしまう。
さらに5年後、75歳でエベレスト2度目の登頂に成功。
気を良くして「80歳で、もう一度登る」と宣言。
ところが、76歳の時、三浦雄一郎さんは全治6ヶ月の大怪我に見舞われてしまう。札幌のスキー場で滑走中に転倒。骨盤と大腿骨の付け根を骨折してしまったのだった。
「再起不能になるかもしれない…」
さすがの三浦さんも、そこまで弱気になっていたという。
それでも2ヶ月半後には退院。医師たちを驚かせた。さらに半年後にはトレーニングを再開。さらに医師たちを驚かせた。
そして80歳となった当年。有言実行、3度目のエベレストの山頂に立ったのだった。
80歳での登頂は、5年前に76歳のネパール人男性が作った「世界最高齢での登頂記録」を塗りかえる大偉業。
「皆さん、本当にありがとう。これ以上ないぐらい疲れていますが、80歳でもまだまだいける。頑張って、頑張って、頑張ってたどりつきました」
衛星電話で登頂成功の連絡をしてきた三浦雄一郎さんは、そう話した。
その声を聞いて、待機していた家族らはホッと胸をなでおろす。
長女の恵美里さん(52)は、「またきっと、90歳、100歳になっても新しいチャレンジがあると思います」と笑顔をこぼす。
一方、妻の朋子さん(80)は、「とにかく後ろを振り返らない。夢の多い主人で(自分が)幸か不幸かわかりません(笑)」と冗談交じりに喜んだ。
三浦雄一郎さんとエベレストに同行していた次男の豪太さん(43)は
「(父は)フラフラしている」と心配していた。
さすがに体力的な消耗が激しく、下山開始後、一時は脱水症状にも見舞われたという。
回復を待って下山を再開。なんとか無事に第4キャンプ(C4)にまで到着。25日にはベースキャンプ(標高5,300m)まで移動する予定である。
そのベースキャンプに待つのは、長男の雄大さん(47)。
父・雄一郎さんはエベレストの山頂から「最強の登山家たちが、僕をここに引っ張りあげてくれた」と、心からの感謝を示したという。
(了)
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ソース:NHKニュース
「三浦雄一郎さん 80歳でエベレスト登頂に成功」
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