「ミスター赤ヘル」
それは現役時代の「山本浩二(やまもと・こうじ)」選手(広島)のこと。
引退から四半世紀を経た彼は今、3連覇のかかる世界大会WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表の監督となっている。
ところで、山本監督と星野仙一氏は「同級生」である(星野氏は北京オリンピックで日本代表を率いた人物)。現役時代にライバル同士だった2人。星野氏は山本監督をこう評す。
「麻雀をやると、僕はイケイケだが、あいつはバッティングと同じで、ものすごく読みが深くて、強い」
どうやら、山本監督はもともと「監督向き」であったらしい。実際、1989年に広島の監督に就任した山本氏は、2連連続で2位、そして1991年にはセ・リーグの優勝監督となっている。読みの深い山本氏の野球はじつに「緻密で精巧」だった。
しかしその後、山本監督率いる広島は低迷することとなり、その結果、2005年に山本氏は監督の座を降りることとなる。時代は山本監督の「精巧さ」よりも、充分な戦力で戦う「ド派手さ」がもてはやされるようになっていた。
そんなこんなで、一時は身を引いた山本氏であったが、その3年後にふたたびユニフォームを着ることとなる。同級生・星野氏が北京オリンピックの日本代表の監督に就任するや、守備走塁コーチとして入閣することとなったのである。
しかし、北京オリンピックの結果は「惨敗」。日本代表チームからは「熱さ」が感じられず、「チームとしての体(てい)」をなしていなかった。
当時の山本氏はこんなコメントを残している。「全体的に淡白だった。乗ってくるようなものがなかった…」。
さて、今度は自身が日本代表を率いて世界に挑むこととなった山本監督。3年連続・世界一への期待が重くのしかかる。
そういえば、同級生の星野氏はこんなことも言っていた。「僕はケンカ沙汰になると『やってやるぜ』というタイプだが、あいつ(山本氏)はケンカせずに丸く収めようとするタイプ」。
熱い星野氏と冷静な山本氏。なんとも対照的な2人ではないか。
星野氏は北京で敗れたが、はたして山本氏は?
星野氏の「イケイケ」はどうやら北京で空回りしてしまったようである。一転、今回は冷静な読みをもつ山本監督。大リーグから日本人選手の招聘が叶わなかったために、WBCの日本代表は純国産のチーム構成となっている。
しかし逆に、この「地味さ」が山本監督の精巧さにはマッチするのかもしれない…。
ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 12/6号
「ナンバー懐古堂」
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