この秋、日本ラグビー界に「歴史的な一歩」が刻まれた。
「田中史朗」と「堀江翔太」、それぞれがニュージーランド、オーストラリアへの移籍を果たした。
「世界最高峰リーグといわれる南半球のスーパー15で初めての日本人選手、いわば『ラグビー版メジャーリーガー』の誕生だ」
身長166cmと「小柄」な田中史朗は、「身体の小さな僕でもやれることを証明すれば、日本の若い選手も世界を目指してくれるはず」と、先陣を切る意気込みを語っている(NZハイランダーズへ移籍)。
一方、巨漢が居並ぶフォワード第一列のポジションを獲得した堀江翔太は、「日本人選手の能力を示すために、誰かがスーパー15に行かなきゃいけない」と強い責任感を口にする(オーストラリアのレベルズへ移籍)。
「2人には、世界への扉を開き、閉塞感に包まれた『日本ラグビーの殻』を破ろうという強い思いがあった」
この頼もしい2人の合流したラグビー日本代表による欧州遠征。「欧州で初となるアウェー戦勝利」を飾ることとなった。
「タフになった」。それがその勝利を見届けた者たちの感想だ。
「どんなに相手のアタックが継続しても、反則せずに身体を張って守り続ける『頑健なディフェンス』。相手がミスを犯せばすぐさま速攻に移り、一か八かのギャンブルでトライを取り急ぐことなく、『我慢強い攻撃』を継続する」
そんな試合ぶりには「攻守両面のディシプリン(規律)の高さ」が光っていたという。
エディ・ジョーンズ・ヘッドコーチは、グルジアを破った試合後に、こう言い放った。
「80分間戦い続けた最後の時間に、これだけアタックできるチームは世界中探したってないぞっ!」
後半ロスタイム、自陣のPKから10のラックを連取して、最後は劇的なサヨナラDG(ドロップゴール・3点)。
それは泥臭い勝利でもあった。
「観衆がどよめくロングパスも、魔法のようなオフロードパスもない。短いパスをつないではクラッシュ、当たって起きてを繰り返し、試合が終わる時にはフィットネスで完勝していた」
欧州遠征において、冒頭の2選手、田中史朗と堀江翔太はニュージーランド帰りのままに日本代表に合流し、欧州勢とのテストマッチに臨んでいた。
「大きくてパワフルな相手に一歩も引かない強さ。単調な仕事も堅実に遂行し続けるメンタルの強さ」
田中、堀江の2選手はジャパンを大いに支え、その勝利に大きく貢献したのだった。
ついに来季、日本人選手がラグビー王国へと旅立つことになる。
「次に世界へ出るのは誰だろう?」
野球、サッカーに続き、日本人の楽しみは今後ともに増えていきそうな気配である。
ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 12/20号
「ラグビー日本代表が欧州遠征で得た収穫」
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