「勝ってしまった2連勝」
オリンピック直前、親善試合に2連勝したサッカーの日本チーム。しかし、前評判の低さからか、その記事はその2連勝があたかも偶然であるかのように書き上げられていた。
「イライラしたし、納得いかなかったし、悔しかった」
そう語るのは大津祐樹。「勝って”しまった”わけじゃない! やるべきこをやって、納得できる勝利をつかんだんだ」。
オリンピックの初戦となったスペイン戦、大津は自らの右足でそれを証明した。優勝候補相手のゴールに決勝弾を叩き込んだのだ!
試合終盤にベンチに下がった大津は、チームメイトの戦いぶりに、思わず涙をこぼしていた。そんな姿がみんなにからかわれ、「大津は泣き虫」ということになった。
しかし、その「泣き虫」は、いきなりの大舞台で、いきなりの「強心臓ぶり」を見せつけたのだ。所属クラブの出場時間が年間45分にも満たなかった男が…。オリンピックでは、6試合全てに出場し、合計3得点をあげている。
大津はつねに「走り続けていた」。
「たくさん走ったのは、実力が足りないからです。人が一歩走るとき、自分は2歩、3歩走ろうって。」
この思いは、日本チームの全員に共有された思いでもあったという。
オリンピック準決勝、メキシコ戦。その先制点を決めたのは、大津の右足だった。それはまさに「本物のビッグ・ゴール」。アフリカ人のような足腰のバネを生かしたシュートに、ウェンブリー・スタジアム8万の大観衆は度肝を抜かれた。「あの先制点は、大会のベストゴールだよ(名波浩・元日本代表)」。
しかし、MF扇原貴宏のゴール前での凡ミスから、相手のシュートを許して逆転負けしてしまう。試合後、扇原は号泣。その権田を擁護すべく、大津は自身のブログにこう記した。
「タカ(扇原貴宏)の責任じゃない。パスコースに顔を出さなかったみんなの責任であり、追加点を取れなかった自分の責任」
大津はひどく落ち込んでいたタカ(扇原貴宏)を見るに見かねていたのだった。
「オレね、仲間とか、友達とかっていうのが好きなんですよ。漫画でも友情モノが大好き」
泣き虫大津は、もはや泣き虫ではなかった。
「最初にスペイン戦に勝てたことは奇跡じゃなくて実力。そして、韓国に負けて4位に終わったことも、やっぱり実力」
ゆっくりと、しかしハッキリとそう語った大津の表情は、少しだけ精悍さを増していた。それは決して日焼けのせいだけではないのだろう…。
出典:Sports Graphic Number 2012年 9/27号
「大津祐樹 大舞台でいきなり結果を出す方法」
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