2013年7月1日月曜日

世界との「格の差」。本田圭佑 [サッカー]



「もっとラインを上げろ!」

本田圭佑は、DF(ディフェンダー)陣を怒鳴りつけていた。

それは、メキシコ戦で1点目の失点をした時だった。



コンフェデ杯のメキシコ戦において、日本代表はイタリア戦と同様「最前線からのプレス」をかけていた。つまり、「前かがり」になっていた。そのため、DF(ディフェンス)ラインが下がってしまうと攻守の間にスペースが生まれ、「間延び」してしまうのだった。

本田は言う、「前にいる選手(攻撃陣)が完璧に相手をプレスではめて、苦し紛れのボールを蹴らせているのに、そのボールをキープされてしまっていた。そうなると、前から行っている分『間延び』する。そこは潰さないと」。

メキシコ戦の1失点目は、まさにその延びたスキを突かれた。DF(ディフェンス)ラインが下がってしまっていた。



だが、本田は一方的に守備陣を批判しているわけではない。両チームが間延びすると、日本の「攻撃陣」にも有利になるはずだった。

「だが本田にも、それを活かしきるほどの『個の力』がなかった(Number誌)」

本田は言う、「メキシコの攻撃陣は、間延びした状況を利用したのにね。相手がやったことをコッチができひんというのは、日本の攻撃陣の責任。向こうの戻りが遅くても、こっちはゴール前まで辿り着けない。これが、日本の現状です」。







「1 - 2」でメキシコに敗れた日本。痛恨の3敗目。

「3戦全敗という最悪の結果でブラジルの地から去ることが決まった。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、本田圭佑は空を仰いで数歩踏み出し、両膝に手をついた(Number誌)」



大会前、本田は宣言していた。

「コンフェデで優勝する」と。

だが、現実は無残であり、屈辱的であった。



試合が終わり、ミックスゾーンに現れた本田。

「悠然と、むしろいつもより堂々と」

一瞬で人垣ができ、通路を隔てる衝立(ついたて)がきしむ。



驚くほど穏やかに、本田はいくつかのことを話した。

「やっぱり最後の局面だったり、試合を決定づけるプレーが少ないのが反省点かなって思う」

「まだ自分のキャパが小さい。キャパをもう一度根本的に見直します」

「自分が取り組んでいることを、もっと死ぬ気で、もっと覚悟をもってやる必要がある」



メキシコ戦の途中、本田はガス欠していた。

本田自身、「今日は後半へばっていた。へばっていると、このレベルではやっぱやれないなと再確認した」と認める。

「いい体勢で、いい状況下の中でボールを持てばやれる。でも、90分間それをやる選手こそが一流。そこが僕の抱える課題です」と本田は言った。



記者は「8割くらいは力を発揮できたのか?」と本田に問う。

本田は「もっと低いね」と即答。

「8割できれば合格点やと思う。今は5、6割かなと思いますね」






ブラジル戦後、「格」という言葉を本田は使っていた。

「『格の差』が、ピッチ上での『表現の差』となる」

メキシコ戦後も、やはり言う。

「こういうレベルの、この緊張感の試合を繰り返すことで、知らぬ間に『格』が上がっていくものだと思う。やっぱ『格』って、知らん間に身についているもんやと思うんですよ」



記者は問う、「本田にとっての『格』とは?」

「そのまんまですよ。『自信の差』がそのまんまイコール『格』になる」

「イタリアはあんなにバテていても、日本に勝ってしまう。その負けられないというプライドが、相手を打ち負かす力になる。負けるわけがないというプライドをもって挑んでいるから、相手を圧倒できる」



対する日本

「僕らはとりあえず一生懸命やってるけれど、結局、勝ち方がわからない。いいサッカーしてるし、相手を圧倒してるんだけど、3-3の状況で点を決めることができない。それが『格の差』なんです」と本田は語る。

アジアだったら日本には「格」がある、と本田は言う。だが、まだ世界ではそれがない。



「やっぱ、『格』って人が判断するものやと思うんですよ。自分がどの程度の『格』かって、自分ではあんまりわからんかったりするから」と本田。

「絶対に負けたくないという気持ちがオーラになり、試合での存在感につながる。そこに差があると、どうしてもビビってしまう。ビビっているつもりはなくてもね」






今回のコンフェデレーションズカップでの惨敗。世界大会での「優勝」までの距離は途轍もなく遠かった。

必然、来年に迫ったW杯にも暗雲が垂れこめる。

だが本田は言う、「まだ一年ある」と。



自身の「キャパ」、そして「格」を高めるため、本田はビッグクラブへの移籍も視野に入れはじめている。

「僕がビッグクラブに行けば、『計り知れない成長』が待っていると思います。僕はとくに『環境先行型』ですから。自分よりもレベルが高いところでやることで、いろんなものを吸収して、今ここにいる」






「本田はいつまでも失望に浸っているタイプの人間ではない。

 すぐに前への一歩を踏み出す。

 たとえそれが強がりだとしても(Number誌)」













(了)






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ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 7/11号 [雑誌]
「もっと死ぬ気で取り組む必要がある。本田圭佑」


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