「彼はバスケ界のスティーブ・ジョブズだ」
そう評されるのは
ステフィン・カリー
Stephen Curry
「ステフ・カリーは、この先のバスケットボールのあり方を変えた。歴史的なことだ」
それは、カリーのプレーがバスケットボールという競技を変えるほど、革新的だということだ(Number誌)。
カリーの革新とは?
それは3P(ポイント)シュート。
ダンクシュートだけで魅せる時代は終わった。
NBAの観客が3Pで総立ちになる時代がやってきた。
彼の手にボールが渡ってから、わずか0.3秒後、
ボールは美しい弧を描き、リングへと向かう(Number誌)。
このカリーには、一瞬のスキさえ見せてはならない。
どんなに遠い距離からでも、かなり高い確率で3Pシュートを決めてしまうからだ。
対カリーの戦術に頭を悩ます、ロン・アダムズ(ウォリアーズのアシスタント・コーチ)は言う。
「3Pを打たせないような対策は、もう効かない。最近の彼は3Pと同じくらい、ドライブインの技術を向上させてきたからだ。今では、彼にボールを持たせないようにトラップするしかなくなってきた」
カリーの父、デル・カリーもまた、3Pシューターだった。NBAで16シーズンのあいだに、通算1,245本の3Pを決めている。
だが当時の3Pはまだ、「試合の中で、たまに打たれるシュート」にすぎなかった。1試合平均3本前後が打たれ、そのうち1本が決まるかどうかだった。
だが今は「3Pシューターが主役になれる時代」だ。
カリー自身が昨シーズンのリーグMVPに選ばれたことで、そのことを証明してみせた。
昨シーズン、カリーが打った3Pは1試合あたり8.1本で、そのうち3.6本を決めている。今シーズンはさらに増え、1試合あたり10.4本打って4.6本決めている(Number誌)。
父デル・カリーは16シーズン、1,083試合をかけて通算1,245本の3Pを成功させた。だが息子カリーは7年目にして、すでに父の記録を抜いている。父の半分以下の427試合で、だ。
昨シーズン、カリーは通算286本の3Pを決め、自身のもつNBA記録を更新した。
試合開始1時間前
カリーがウォームアップのためにコートに出てくると、待ってましたとばかりにファンやメディアが群がってくる。
約15分間、黙々と、いつものドリブルを続けていく。ボールを2つ使い、足の間をくぐらせてのドリブルワークや、試合での状況を想定したシュート。ボールはカリーの意のままに動き、放たれたシュートは次々とネットを通過する。
派手なダンクシュートの1本もするわけでないのに、ドリブルやシュートだけで見世物になってしまうのだ(Number誌)。
カリーは言う。
「僕がやるプレーは、ほとんどの人が『自分もできる』と思っているようなことなんだ。たとえば、アンドレ・イグダーラが決めるような豪快なダンクは、僕でも出来ないし、ほとんどの人が出来ないことだ。でもシュートすることは誰でも、その人なりのやり方で打つことができる。誰でも決められるわけではないけれど、『誰でも打つことはできる』んだ」
確かにカリーのプレーは、「やろうと思えばできそうなプレー」を別次元なほど高い完成度でやってのけるところに、その魅力がある。
カリーは言う。
「僕はリーグで誰よりも足が速くてスピードだけで相手を抜き去ることができるわけではないから、相手をあざむくように工夫し、スペースをつくりだす色々な方法を見つけなくてはいけないんだ。想像力と創造力をつかって『プレーが実際に起こる前に見極めること』が、僕にとってはとても大事なことなんだ」
カリーは、「誰でもできること」を究極まで突き詰めたことで、歴史を変えてしまったのだ(Number誌)。
カリーは、カメラを一斉にむけられても、照明のまぶしさに惑わされないようにしているという。
カリーは言う。
「今を楽しむようにしている。と同時に『自分がどうやってここまで来たか』、ものの見方や考え方を忘れないようにもしている。『いつもの自分』のルーティンを守り、変えないことで、同じリズムをもちつづけるようにしているんだ」
「さ、行くぞ、チューバッカ」
試合後の囲み取材をおえたカリーは、スターウォーズのキャラ「チューバッカ」の形をしたバックパックをひょいと背負ってロッカールームを後にした。
最近のバスケ少年たちは、基礎練習もそっちのけで3Pシュートにいそしんでいるという。
カリーがあまりにも楽しそうに、軽々と3Pを決めるのを見ているからだ。
世の中の常識なんて、ちょっとしたことで180度かわってしまうものだ。
実際、カリー自身がそれを証明する存在でもある(Number誌)。
True genius lies not in doing extraordinary thing
but in doing ordinary things extraordinarily well.
Louis H. Wilson
真の天分とは、並外れたことをするのではなく、
普通のことを並外れてうまくする才能のことだ。
ルイス・H・ウィルソン
(了)
ソース;Number(ナンバー)894号 〝エディー後〟のジャパン。特集 日本ラグビー「再生」 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー))
ステフィン・カリー「大切なのは想像力と創造力」
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