2014年5月27日火曜日

映画『ネクスト・ゴール』 [サッカー]




「0 - 31」

そんな大敗が、サッカーの歴史にあった。



2001年4月 日韓W杯の予選

サモアとオーストラリアとの一戦だ。

——米領サモアは、この試合で大敗を喫した。それも並みの数字ではない。0対31。サッカーの国際Aマッチ史上最悪の大敗だ。資料を調べると、22対0(オーストラリア対トンガ)とか、20対0(クウェート対ブータン)とかいった記録がでてくるが、31対0は他を圧する。(Number誌)。



サモア代表のGK(ゴールキーパー)、ニッキーはひどく傷ついた。

「ひとつ勝ちたい…。そしたら、幸せな人間として死ねる」

米領サモアの弱さは、つとに知られていた。1994年のFIFA加盟から、2011年までの18年間、30戦全敗。総得点12に対して、総失点は229にものぼっていた。

まさに「世界最弱」。いわゆるドアマット・チーム、踏みつけられる一方。



ところでアメリカ領であるサモアは、南太平洋に浮かぶ人口5万5,000人の、小さくも美しい島。地場産業はなく、若者の多くは軍に入ってアメリカ本土に渡るという。

先の大敗、パスポートの不備でレギュラー選手がほとんど出場できなかったとはいえ、この惨敗は凄まじかった。選手全員が”仕事をもった寄せ集め集団(無給)”なのだから無理もない。










映画『ネクスト・ゴール』は、そんなサモア代表のドキュメンタリー(実話)である。

——そうか、負け犬がはい上がる話か。と考えるのはまともな反応だ。しかし、どんな負け犬がどんな道筋をへてはい上がるのか?

その起爆剤となるのが、オランダから派遣された新監督、トーマス・ロンゲン。かつてMLSのDCユナイテッドをカップ戦王者に導いた経歴をもつ、熱血漢。

——優秀だが、昔気質で口の悪い監督は、またたく間に島の反感を買うことに。しかしその厳しい指導と熱意は、次第に選手たちの意識を変え、チームは少しずつ強くなる(公式HP)。







サモア出身の元横綱、武蔵丸はこう評する。

「この映画を通して、アメリカ領サモアの素晴らしい文化、島民皆が家族のような温かい関係性、そしてありのままの自然や景色を体感してほしい」

勝村政信(俳優)

「サモアと日本のサッカーの成り立ちがとても似ていて驚いた」







澤穂希(なでしこ)

「数年前には大津波が国土を襲い、多くの犠牲があったこの国で、愛する人のため、仲間のため、そして母国のために立ち上がる代表選手たちから、多くの感動と勇気をもらいました」

宮間あや(同)

「心が震えるほどの、この感動」

玉木正之

「スポーツ映画で泣いたのは、『フィールド・オブ・ドリームス』以来です」

赤ペン瀧川先生

「サッカーとか全然わからないけど、この映画の凄さはわかったよ! マジ最高でした!」






(了)






ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2014年 6/5号 [雑誌]



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