2013年2月23日土曜日

達人「塩田剛三」の感化力。そばにいるだけで…?



「『塩田剛三』館長のような不世出の達人のお側にいると、何というか、身体の質が変化するんです」

そう言うのは、塩田剛三の内弟子でもあった安藤毎夫師範。

「内弟子になって4年目ぐらいに、塩田館長に感化され、心がすごくキレイになってきたというか…、誰と組んでも、相手の動きがスローモーションのように見えることがあったんですよ」



そんな時に迎えた1987年の演武会、中曽根内閣の葉梨大臣をお招きしてのものだった。

安藤師範は塩田館長の「受け」を務めることになっていたのだが、安藤師範は「今日なら、塩田館長にも勝てる」とすら思っていたという。

なにせ、どんなに素早い動きでもスローモーションに見える。だから誰とやっても怖くない。たとえ館長といえども…。



そんな安藤師範の気を察してか、塩田剛三館長は動かない。

「いつもだったら技がはじまるタイミングになっても、塩田館長が動かないんです」と安藤師範。「あれ? と思っていたら、大臣のほうを向いて合気道の説明をし始めて…、そして、その話の最中にいきなり振り向きざまに攻撃が来て!」

それでも、館長の動きはスローモーション。安藤師範は「ものすごくいい受け身」がとれたことを鮮明に覚えている。



「でも、その受け身を終えた途端に、それまでの聡明に澄み切った気持ちが崩れてしまって、普段の私に戻ってしまったんです…」と残念そうな安藤師範。

後日、塩田館長は「安藤がすごく伸びた」と人に語っていたという。






またある時、内弟子ではない指導員が、たまたま塩田館長と喫茶店でお茶をして、40〜50分ほど雑談を交わしたことがあった。

するとその後、その指導員が道場へ行ったら、「自分でも信じられないほど、バンバン技が決まる」。館長とは技の話をしたわけではなかったのに!

「きっと館長の側にいただけで、塩田館長の身体に感化され、自分の身体が活性化したんでしょうね」と安藤師範。



しかし残念ながら、バンバン技が決まったのは、やはりその日限り。

翌日以降は、本人も「あれは一体なんだったんだ…?」と呆然となるばかり。



「彼の場合は、一夜漬け的に塩田館長の身体感覚のようなものが共鳴し、一時的に達人の能力を体現できたのかもしれません」と安藤師範。

「塩田館長ご自身も、『オレが合気道の本質をつかめたのは、オヤジのおかげなんだ』と仰っていましたから」







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ソース:月刊 秘伝 2013年 02月号 (特別付録DVD付)[雑誌]
「内弟子 学びの四訣 忍ぶ・察する・観る・捨てる」

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