2012年9月22日土曜日

「いいチーム」になった”なでしこ”。川澄奈穂美


「W杯の時も、最初から良いって感じではなく、準々決勝でドイツに勝って、勢いに乗ったんです。そういう意味で、今回のオリンピックのターニング・ポイントとなったのは、ブラジル戦でした」

女子サッカー、なでしこジャパンの川澄奈穂美は、弾んだ声で語りはじめた。

「いざ、試合が始まると、『ブラジルの巧さ』に驚愕しました。ボールが獲れないんです」



オリンピック準々決勝のブラジル戦、なでしこジャパンは本来の持ち味である攻撃的なサッカーをさっぱりさせてもらえなかった。

そこで、試合の真っ最中に「戦術をスイッチ」。従来のパスを回すポゼッション・サッカーを捨て、一発狙いの「カウンター・サッカー」に切り替えた。

その結果は2対0の大勝利。内容的にはブラジルに完敗したのかもしれないが、なでしこは「泥臭く」勝利をもぎ取ったのだ。



「なでしこって言うと、バルセロナ(スペイン)のようなパスサッカーって思われるんですけど、自分たちは全然そんなこと思っていないんですよ。それよりも、諦めない気持ちで泥臭く、ひたむきに戦う方が、自分たちに合っていると思うんです。

だから、ブラジル戦でパスサッカーができないというネガティブな考え方はなかったです。粘って、粘って、相手の嫌なことを最後までがんばってやる。それが、『なでしこサッカーの原点』なんですよ。」



そう前向きに語る川澄自身、今大会では守備に忙殺され、ゴールはカナダ戦の1ゴールに終わっている。

「もともと、大学までは中盤でパスをさばいている選手だったので、ゴールに対する執着心があまりないんですよ。シュートも苦手ですし…。ゴールよりもチームの一員として頑張りたいんです」

そう彼女が言う通り、彼女のプレーには欲や執着が少ない。そのプレーは常に献身的であり、だからこそ逆に個が際立っている。



ロンドン五輪の決勝戦、アメリカに敗れた後、川澄はこう言っていた。

「すごく、いいチームになったと思います」

彼女の思う「いいチーム」。それが今のなでしこだ。



このシンプルな言葉の中にこそ、なでしこの全てが詰まっているかのように響く。

必ずしも勝つから「いいチーム」でもなく、メダルを獲ったから「いいチーム」だったわけでもない。

「いいチーム」になったからこそ、あのメダルは「必然」となったのだ。





出典:Sports Graphic Number 2012年 9/27号
「川澄奈穂美 ”いいチーム”って何だろう?」

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