2015年8月26日水曜日
なでしこ大儀見の見た「本田圭佑」
以下、Number(ナンバー)884号 特集 本田圭佑 より引用
大儀見優季(なでしこジャパン)は言う。
「本田選手を興味をもって見るようになったのは、彼がモスクワでプレーしていた頃からです。発言も面白いんですけど、その言葉を受けてピッチの中でどうプレーしているのかを見ると、言葉とプレーがしっかりと繋がっているんですよ。しかも1試合ごとに常に変化があって、見ていて興味深かったです。
本田選手は強気な発言や、ポジティブな言葉が多いイメージがありますよね。それは自分に言い聞かせている部分や自分の弱さを見せたくない部分があるから、誰かに何を言われようとブレずに自分を貫こうとしているんだと思います。そういう部分は自分にも似ていると思いますし、自分でもたまに「こういうときに本田選手なら何て言うのかな」とか考えたりすることもありますね。
プレーの面では、たとえば1本のパスを通すにしても、パスの受け手にどう動いてほしいのか、次にどういうプレーに繋げてほしいのか、明確な意図をもって出しているように見えます。先の先まで考えているから、受け手の選手も選択肢を自然ともてる。本田選手は自分の視界に入っていない世界までイメージできているんだと思います。ボールを持って瞬間だけではなくて、ボールを受ける前から受けた後までの”時間軸”の流れがつながっている感じが、ピッチの中で見えるんです。
「自分がボールを持つことでどのくらい状況が変化するのか」ということが頭に入っていて、状況判断を感覚的に、しかも的確にできている。2012年5月の親善試合のアゼルバイジャン戦で出したスルーパスは、味方の走るスピードと相手のスピード、ボールのスピード、そのすべてをコントロールしたパスで、鳥肌ものでした。もちろんミスはあるんですけど、それはまだ再現性が高められていないプレーにトライした結果であって、”完璧を求めつつ、ミスもする選手”だからこそ、面白いし興味がわくんだと思います。
最近はピッチ外での活動もふくめて、自分自身だけでなく、日本のサッカー界の未来を考えて動いているように見えますよね。クラブを経営するにも、サッカー関連の施設をつくるのも、多くの人は現役を引退してから考えます。それを、現役選手としてのキャリアと同時進行で行えているのがすごいと思います。新たなサッカー選手としての生き方というか、ひとつのモデルケースをつくっている気がします。
欧州にいると、とくに女子選手なんかはすごくセカンドキャリアについて考えているので、現役時代からピッチ外での活動も同時にやっている選手は多いです。本田選手とは規模は違いますけど、自分もできる範囲で日本のサッカー界や社会全体に貢献していきたい思いはあるので、そういうときに先にやってくれている人がいるのは心強いですね。
人間的な面で言うと、自己表現がはっきりしていて自分のパーソナリティを表現できる力は、私には真似できないですね。それがインパクトにもなるし、影響力にもつながっていくんだと思うんですけど。やることが大胆ですよね。私は思い切って金髪とか、両腕に腕時計とかはできないです(笑)。
本田選手には常に先頭を走るリーダーでいてほしいですね。サッカー界だけではなくて、日本社会全体に影響を与えられる存在でいてほしい。道なき道をいく生き方は、試行錯誤や苦悩もたくさんあると思います。でも、そういうなかで一つの指標を作り続ける人であってほしい。それが子供たちの夢にも繋がるんだと思います」
本田は言う。
「もっと凄いことを考える人はこの先あらわれると思いますよ。というのも、僕自身が先代のサッカー選手から学んできたことが多いですしね。まずはカズさん。僕と同世代のほとんどの選手は、カズさん、そしてゴンさんに憧れてサッカー選手を目指し、プロになった。そかもそのカズさんが未だ現役で活躍されている。さらには、ヒデさん。自分自身も大きな影響を受けましたし、現役を終えられてからはサッカー以外の分野でも活動されている。では、本田圭佑は何で道をつくろうかと考えたとき、先人の歩んだ道は参考にさせてもらいましたし、それがなければ今のアイディアに至ったかどうかは自信がありません」
(了)
ソース:Number(ナンバー)884号 特集 本田圭佑 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィックナンバー))
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