2015年1月26日月曜日

90平方インチのラケット [ロジャー・フェデラー] テニス


ロジャー・フェデラーのテニスラケットは小さかった。

―― ナダルやジョコビッチは100平方インチ。マリーは98平方インチ。それらに比べてフェデラーの90平方インチは極めて小さい。これまでフェデラーは頑なに”面の小さなラケット”にこだわっていた(Number誌)。

その小さな面は「フェデラーにしか使えない」と言われてきた。その90平方インチのラケットでフェデラーはこれまで、四大大会優勝17回という歴代最多記録を刻んできた。そのサイズには”王者の自負”がこもっていたのだ。



しかし、、、

――90平方インチのラケットはいつしか、フェデラーでも手に余すような”時代遅れの代物”になっていた。パワーで劣り、ミスヒットにも厳しかった(Number誌)。

昨季序盤、フェデラーのランキングは8位にまで転落した。12年ぶりの絶不調だった。背中の痛みに不振が重なり、ウィンブルドンでは2回戦敗退。同大会で準々決勝にも進めなかったのは、じつに11年ぶりだった。



そしてついに、フェデラーは決断をくだした。

7平方インチ、タバコ箱ほどの大きさを受け入れた。それまでの90平方インチのラケット面を、97平方インチにまで広げた。

フェデラーは言う。

「新しいラケットはパワーがあってミスへの許容量も広がった。サーブに威力を感じるし、バックハンドは楽に打てる。以前は毎日ラケットと格闘していた感じだったのが、いまはすごくシンプル。何の後悔もない」

―― 面が大きくなればスイートスポットも広がる。若干コントロール性能が落ちたとしても、繊細な感覚と高い技術をストレスなく発揮できるメリットは想像以上に大きかった(Number誌)。



新コーチに就任したステファン・エドバーグも大きな助けになった。

フェデラーは言う。「ステファンはもっと定期的にたくさんの試合をこなすべきだって言ったんだ。”若い頃なら長い休みをとるのもいいけど、年を取ったらそのほうが体には楽だ”って」



老いは恥ではない。

そう言ったのはジョージ・フォアマン(ボクシング元世界ヘビー級王者)。



テニス史上最高の王者、ロジャー・フェデラーも今や33歳。

”タバコ箱ほどの大きさ”を受け入れられるようになった彼は今季、ふたたび世界ランキング1位の座を狙えるまでの復活を果たしている。国別対抗のデビスカップでも、母国スイスを初優勝へと導いた。

フェデラーは言う。

「年間に4、5敗しかしなかった時代(2005、2006)が自分の全盛期だったかもしれない。でも今だって、ハードワークと経験、あらゆるものを総動員して、より良い選手であろうとしているんだよ」



―― 古くて新しいフェデラー。久々のNo.1返り咲きが近づいている(Number誌)。










(了)






ソース:Number(ナンバー)869号 錦織圭のすべて。全豪OP直前総力特集 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー))
ロジャー・フェデラー「老いを認め、取り戻した精度と自信」



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