2013年5月27日月曜日

マンU移籍1年目、香川真司は「赤い悪魔」になれたのか [サッカー]



イングランド「プレミア・リーグ」

赤い悪魔「マンチェスター・ユナイテッド」がリーグ優勝を決めた後

香川真司は「自分はもっと貢献できたと思う」とコメントしていた。







移籍1年目、香川真司への評価はファンの間でも分かれている。

「よくやった」と主張する者もいれば、「期待はずれだった」と言う連中もいる。

裏を返せば、ドルトムント(ドイツ)から鳴り物入りでやってきた香川真司に対して、ファンらの期待が相当に大きかったということでもある。



プレミアリーグ20試合出場 通算6ゴール 3アシスト

これが今季、香川真司の戦績である。「6ゴール」が多いのか少ないのか? 移籍前のドルトムンドで香川は「13ゴール(31試合出場)」を挙げている(2012)。

香川自身は「満足していない」と言う。だが、マンチェスター・ユナイテッドで香川を上回るゴールを決めたのは、ファンペルシ、ルーニー、エルナンデスの3人だけ(ファンペルシの25ゴールは別格)。



何より、香川のゴールは印象的なものばかりだった。

初ゴールはホーム開幕戦。先発出場した香川が決勝弾を決め、フラムFC戦をものにした(2012年8月25日)。この活躍で、香川はユナイテッド8月の月間MVP(最優秀選手賞)に選ばれる。

今年(2013)3月のノリッチ戦では、一試合3得点の「ハットトリック」を達成。プレミアリーグにおいて、アジア人選手初の快挙であった。



そして最終戦(5月19日、ウェスト・ブロムウィッチ戦)。ファーガソン監督の最後となるこの戦いで、香川は先発として抜擢され、期待通りに先制点を挙げる。

「香川はピッチのあらゆるエリアで印象的なプレーを披露し、ユナイテッド5得点のうち3点に絡んだ(スカイ・スポーツ)」

この月もまた、香川はチーム月間MVP(最優秀選手賞)。2位エルナンデスの得票率31%を大きく上回る51%という高い得票率を得た。開幕の8月MVPと合わせて、まさに「香川にはじまり香川に終わった」。







なるほど、ゴール数、そしてインパクトは申し分ない。

それでも不満を述べるのならば、「アシストだ」と、ミカエル・ラウドルップ(現スウォンジー監督)は言う。

「香川のような選手に求められるのは『ラストパス』『ラストタッチ』の2つ。前者は『味方を生かすプレー』、後者は『味方に生かされるプレー』という解釈だ」



「味方に生かされるプレー」、つまり自分がゴールを決めるプレーにおいて、香川は及第点。

「だが、味方を生かすプレーが、今後は必要とされるだろう」とラウドルップ氏は期待する。

というのも、今季をもって、イングランド最高のMF(ミッドフィルダー)の一人「ポール・スコールズ」がチームを去る。そこでファーガソン監督は、その後継者として香川真司に白羽の矢を立てた、というのである。



そもそも、ファーガソン監督は「一人の選手のゴール数が突出するのを好まない」。

「昔からファーガソン監督は、スペシャリストよりも『ユーティリティー性の高い選手』を重用してきた(Number誌)」

戦術的なオプション(選択肢)を増やすため、ユナイテッドの選手たちには「複数の役割」が求められるのである。それは「選手としての幅」ということだ。



この点、「新世代の10番」である香川は、ファーガソン監督の厳しいメガネに適った。

だからこそ、27年にわたる長期政権を去ろうとしていたファーガソン監督は、「最後の愛弟子」の一人に、香川真司を選んだのだろう。

自分が勇退したあとのチーム像を描いていたファーガソン監督。若いだけではなく、キャリアも超一流の香川真司の獲得は、まさに象徴的だった。ファーガソン監督は何度も「シンジ(香川)こそがチームで『次代の10番』を担う選手だ」と記者連中にほのめかしている。



「香川は戦術的な理解が早かったし、どのポジションでも自分の役割を全うしていたと思うよ」と、マイケル・オーウェン(元マンU選手)は香川の働きを認める。

「動きは鋭いし、何よりパスセンスとサッカー脳の良さが頭抜けていた」と、マーク・オグデン(デイリー・テレグラフ紙)も評価する。

「攻撃的MFとして、香川のパス成功率は特筆すべきレベルなんだ!」



「でも、シンジ(香川)は謙虚すぎるよ(笑)」

サイモン・マロック(サンデー・ミラー紙)は、そう笑う。

「イングランドでは、(謙虚さは)自信がないんじゃないかと、勘ぐられることもあるから(笑)」



ミックスゾーンでは、頭を下げて「ソーリー」と言いながら記者たちの前を通り過ぎていくという香川。その謙虚さや腰の低さが、記者たちには「嬉しい気遣い」なのだという。

「バレンシアなんか、こっちに目もくれず、前だけ見てドンドン歩いて行くからね! 振り切るのはDF(ディフェンダー)だけにして欲しいよ(笑)」



物静かな香川は、すぐにチームに馴染んで「いじめられ始めた」ともいう。

クリスマス・パーティーではカラオケを熱唱させられ、優勝パーティーの後の打ち上げでは、2次会、3次会、そして最後の最後、朝の6時まで粘らせられた。

「まさか、シンジがいるとは思わないからビックリしたよ!」



ユナイテッドの選手の中には、チームともファンともずっと距離を置いたままの選手もいるが、「人間臭い香川」は地元ファンから「親近感」を持たれているのだという。

「すごく好感がもてるね」とサイモン・マロック(サンデー・ミラー紙)は言う。

「だけど、『自分のやっていることは間違っていない』と言うくらい傲慢で、ちょうどいいんだけどね(笑)」







(了)






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ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 6/13号 [雑誌]
「香川真司は『真のレッドデビル』になったのか」

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