2013年6月25日火曜日

スペイン代表の「変えないスタイル」 [サッカー]



「サッカーは計算じゃないから、常に強い方が勝つわけじゃないんだ」

そう言うのは、サッカー・スペイン代表の「シャビ・エルナンデス」。世界ランキング1位のスペインといえども、常に勝てるわけではない。



たとえば、W杯予選におけるスペイン代表の試合には「首を傾げざるをえない試合」もある。

昨年10月のフランス戦、今年3月のフィンランド戦において、スペインは「勝って然るべき試合内容」を展開しながら、結局は両戦とも引き分けに終わっている。

「スペイン・サッカーの根幹をなす『パスをつないでボールをコントロールする』は、フランス戦は少なくとも最初の45分、フィンランド戦では90分を通してできていた。なのに、それが得点に結びつかず、勝って然るべき試合に勝てなかった(Number誌)」



「確かにフィンランド戦はしくじった」と、シャビも認める。

ボールを完全に支配していたのはスペインだったが、フィンランドが1度だけゴール枠内にシュートを打って1得点。

「僕らは運がなかった」とシャビ。「でも、あんな試合、100回やったら99回は僕らが勝つよ」

その一試合だけを見れば、どんなに試合内容が良くとも、勝てない試合があるかもしれない。だが、スペインのような強いチームというのは、シャビの言う通り、確率的には勝ち数が積み上がることになる。



「重要なのは、スペインには『己のスタイル』があるってこと。僕らは6年前から『同じサッカー』を続けているんだ」と、シャビは語る。

シャビの言う「己のスタイル」とは、言わずと知れた「ポゼッション・サッカー」。ボールを支配し、短いパスをつないで相手ゴールに迫るというスタイルである。



シャビは続ける。「時には残念な結果が出て、自分たちの哲学を疑ってしまうこともあるけれど、その哲学のおかげでW杯を制し、欧州王座を防衛することができたんだ(大会史上初の2連覇)」。

ほんの8年くらい前まで、スペイン代表は「才能はあるけれど自信は持てない選手の集まりだったんだ」とシャビは言う。「W杯でもユーロ(欧州選手権)でも、端役だった。それが、いまや唯一無二のチームだ」。










スペインが世界王者として君臨している今、打倒スペインへ向けた対策は練られてきている。

「敵はいつだってこちらの弱点を探し、プレイメイクを邪魔しようとする」とシャビは言う。



それは、スペイン代表と同じスタイルのサッカーを展開する同国の「FCバルセロナ」にも言えることである。

「昨季のCL(チャンピオンズ・リーグ)準決勝、チェルシー戦第1レグ。FCバルセロナのボール支配率は『72%』に及んだ。総シュート数はチェルシーの4本に対し19本だった。それでも1-0で勝ったのはチェルシーの方だった(Number誌)」

今季のCLミラン戦第1レグも、バルセロナは「66%」のボール支配率を記録しながら、0-2で敗れている。







今までは、ポゼッション(ボール支配)が勝ちへ直結していたのに、最近はその雲行きが怪しくなりつつある。

「敵も失敗から学び続けているから、日に日に勝ちづらくなっているよ」と、バルセロナとスペイン代表の両方で活躍するシャビは言う。

「レアル・マドリーがバルセロナに仕掛けた高い位置からのプレッシャーは効果があったし、バイエルン・ミュンヘンは選手を連動させて中盤のパスコースを巧みにカットしていた(Number誌)」



「ただ、それは僕らのサッカーが行き詰まっているということじゃない」とシャビは言う。

「立ち往生しないためには、進化すればいいんだ」と。

「実際、今シーズンのバルセロナは変わった。昨季までの特徴だった『横につなぐパス』が減り、敵ゴールを『より真っ直ぐに狙う』ようになった。相手の守備陣形が整う前に攻め込むためだ(Number誌)」



「短いパスばかり繋いでいては、そのうち敵に読まれてしまう」とシャビ。

「でもね、どう進化するにせよ、バルセロナも代表も『ボールが選手の立ち位置を決める』という前提は譲れないよ。ボールを持つ時間が長ければ長いほど、ライン間のバランスは整う。だから僕はやみくもに長いパスを蹴って、ただ縦に急ぐことには賛成できないんだ」



W杯、ユーロ(欧州選手権)と制してきたスペイン代表。

残るタイトルは、コンフェデレーションズ・カップである。

前回4年前の南ア・コンフェデ杯、スペイン代表は準決勝にアメリカに敗れており、今回はその雪辱を期している。



コンフェデ杯への意気込みを、シャビはこう語る。

「スペインは今も道を示し続けていることをアピールしたい。誰もが僕らに一目置き、僕らを鑑としているからね」













(了)






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ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 6/27号 [雑誌]
「『敵に弱点を突かれても、僕たちが進化すればいい』 世界王者の司令塔・シャビ」


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