2012年10月7日日曜日

ヤンキースのジンクスを守った2人の日本人選手


「倒れ込んだとき、最初はジョークかと思った。彼はそういうことが好きだからね」

しかし、打球を追って倒れ込んだ43歳の守護神「マリアノ・リベラ」は苦痛に顔を歪めたまま、立ち上がることができなかった。右ヒザ前十字靭帯断裂。通算608セーブのメジャー記録をもち、「ミスター・オートマチック」の異名をもつ彼のシーズンは、早々に終わってしまった。

5月3日のこのアクシデントにより、今季のニューヨーク・ヤンキースの「勝ちパターン」の一つは失われてしまった。



このアクシデントに先立つ4月、ヤンキースは大物トレードした「マイケル・ピネダ」も右肩の手術で完全に失っていた。若手有望株、ヘスース・モンテーロを放出してまで手に入れたというのに…。

「200イニングの投球回を期待した投手が、1イニングどころか、1球も投げられなかった…」とジラルディ監督は嘆いていた。



そんなヤンキースに空いた穴を埋めたのが、同じく移籍組の「黒田博樹」。黒田は自己最多の14勝。チーム最多の200イニングを超える投球で、「ヤンキースの戦いに安定感をもたらした」。

「彼の投げる試合はいつも安心していられるよ。援護点に恵まれていたら、あと3つか4つは勝っていただろう」とジラルディ監督も大満足。



一方の打撃陣は、しごく好調。チームのホームラン数218本は30球団中トップ。球団記録の244本にも迫る勢いだ。

「ホームランを狙っているのではなく、しっかりボールを見極めて、甘いボールが来るのを待つ。ヤンキースにはそういうタイプの打者が多い。ホームランが出るのは必然だ」と打撃コーチは語る。

最多のホームランを放っているグランダーソンも同様に、「あくまで結果としてのホームランだ」と語る。



そこに入ってきた「イチロー」。

チームの負傷者とイチロー本人の希望によって成立したこの交渉は、「ローリスク・ハイリターンのおいしいトレード」だった。

「ヤンキースは、スモールボール(小技)をやるようなチームではない」とジラルディ監督は言うが、「イチローのような機動力のある選手がいるならば『やる』。必要な場面になったら」とも語る。

実際に、レイズに連勝した試合では、イチローが二盗を決めている。



主力選手が多数、DL(故障者リスト)に送り込まれながらも、名門ヤンキースの「幸運のジンクス」は生き続けているようだ。

今季の場合、そのジンクスを守るのに一役も二役も買ったのが、黒田博樹、イチローという日本人選手たちだったのは、言うまでもないだろう。

タフなレギュラーシーズンを戦ったヤンキースは今、28度目の世界一へと歩を進めている。





ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 10/11号
「ニューヨーク・ヤンキース 10月は俺たちの季節」

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