2012年11月16日金曜日

パワー野球の「韓国」。日本に挑む


「まるでコンサート会場」

それが「韓国」の野球スタイルだ。大音量のスピーカーからは演歌「釜山港へ帰れ」が流れ、超満員の大観衆は大合唱…。



「韓国では、野球がかつてないほどの人気を博している」

5年前の観客動員数が300万人程度だったのが、今季はその倍以上の715万人を超えている。

2008年の北京オリンピックでの「金メダル」、2009年のWBCでの「準優勝」を受けて、「若い世代が球場に足を運ぶようになった」。その人気はサッカーをも圧倒的に凌ぐ。当然、今回の第3回WBCに対する球界への期待は尋常ならざるものがある。



「日本が何より警戒しなければいけないのは、『韓国打線のパワー』」

韓国では基本的にホームラン志向が強いこともあり、「理想の3人」をクリーンナップ(3番・4番・5番)に並べれば、「日本代表よりも『パワーは上』かもしれない」。

その「理想の3人」とは、「秋信守(チュ・シンス)」、「金泰均(キム・テギュン)」、「李大浩(イ・デホ)」。



アメリカ大リーグ(インディアンス)に籍を置く「秋信守(チュ・シンス)」は、前回のWBCでも準決勝・決勝とホームランを放っている。「国際大会での勝負強さ」には定評のある選手だ。

昨季まで千葉ロッテで打っていた「金泰均(キム・テギュン)」、今季復帰した韓国球界では3割6分3厘という高打率で「首位打者」に輝いた。「日本球界を知っているというアドバンテージを持っているのは間違いない」。

現在オリックスに所属する「李大浩(イ・デホ)」は、今季日本初挑戦ながら、24本塁打91打点で、パ・リーグの打点王に輝いた大型打者。「彼にはパワーだけでなく、日本の細かい野球に対応する器用さがある」。



韓国選手にとってのWBCは、その「報奨」も見逃せない魅力となっている。

韓国のスポーツ界では、その活躍によって「兵役免除」が約束されており、「国際大会での結果と人生がそのままリンクしている」のだ。

すでに結果を残して兵役免除となっている選手たちはさておき、「ハングリーな若手」たちにとっては「たまらない魅力」である。



第3回WBCは来年3月。

日韓両国は過去2回のWBCで「覇権を争ったライバル同士」。

3連覇のかかる日本と、空前の野球ブームに沸く韓国。ふたたび、両国は相まみえることとなるのであろうか?





ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 11/8号
「韓国代表、虎視眈々。」

2012年11月15日木曜日

「体重100kg以上の人の運動会?」。中村剛也(西武)



「ひとことで言うと、動けるデブ」

平尾博嗣が親しげにそう評するのは、「中村剛也(なかむら・たけや)」西武(102kg)。

「走らせても速い。もし体重100kg以上の人の運動会があったら、間違いなく一位ですよ」



今シーズン、「動けるデブ」中村は27本のホームランを打って、2年連続4度目の本塁打王となった。

「僕から見たら、サンペイ(中村のチーム内での愛称)は筋肉だけではなく、『余計な肉』も使って打っているように見える」

チームメイトの平尾が言うには、中村の「よけいな肉」までが、「人にはない飛距離」を生み出しているのだという。



「モンゴル人力士、特に白鳳に似ているように思うんだ」

中村の筋肉は「柔らかくて強い」。そこに幾分かの脂肪が含まれているからか、中村の筋肉には「しなやかさ」があるのだという。ウエイトとサプリでカチカチに固められた筋肉とは違うというのだ。



そして、意外なのが中村のスイングの「遅さ」である。

「ホームラン打者というと普通は速いスイング。松井秀喜さんみたいな。でも、サンペイ(中村)のスイングは遅い。少なくともスイングの速さで飛ばしているわけではないですね」



なぜ、中村は統一球に変わってからもホームランを量産できるのか。この問いに確たる答えはない。ただ、平尾が挙げたヒントは「よけいな肉」と「遅いスイング」であった。

走らせると速いが、スイングは遅いという中村。その豊富な肉の隅々まで活用する術(すべ)を充分に心得ているのかもしれない。

本当に「体重100kg以上の人の運動会」があったら、面白いのだが…。





ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 11/8号
「中村剛也 破壊力コンビの知られざる実像」

2012年11月14日水曜日

「まずチーム」。稲葉篤紀(日本ハム)の犠打


「凡打でも一生懸命に走るんです」

そう言うのは、不惑(40歳)を迎えたばかりのベテラン「稲葉篤紀(いなば・あつのり)」日本ハム。

「それを見た他の選手が、何かを感じてくれたらいいな、と」



この大ベテラン、今シーズンの犠打(送りバント、またはスクイズ)は「8」。彼がこれほど自分を犠牲にして走者を送ったのは、日本ハムに移籍してから初めてである。

それは何も打撃が衰えたからではない。昨季はプロ入り最低の打率だったとはいえ、今季はシーズン序盤に首位打者争いを演じるほどに復調していた(2,000本安打も達成)。彼は40になっても、今もって日本ハムの打撃の主軸。併殺打も三振も少ない堅実なるバッターである。



「あの稲葉さんでも、バントをやるんだ…」

稲葉の言う通り、彼の献身的な姿は若手選手たちに「何か」を感じさせずにはいられなかった。

そのせいか、稲葉が犠打(送りバント)を成功させた試合の勝敗は、6勝1敗1分け。8回の犠打のうち、4回までが得点にまでつながっている。

「稲葉が送りバントをすることで、戦術以上の効果が期待できる。仮にその時は点につながらなくても、その試合、ひいては、そのシーズン全体に影響を及ぼすのだ(中村計)」



「たとえば、王さん(王貞治)は、個々が頑張れば、それがチームのためになるっていう考え方だったと思うんです。でも、僕はそこまでのバッターではないので、『まずチーム』という考え。自分の成績は次でいいんです」

そんな考えをもつ稲葉、その後ろ姿を見ていた若手たちも奮起せざるを得ない。それが「稲葉効果」であった。



2012年10月2日、日本ハムのリーグ優勝が決まった時、真っ先に胴上げされたのは当然、栗原監督。

そして、その次が稲葉だった。

「引退するわけでもないんだから、やめてくれよ」という稲葉をムリに輪の中央に誘導する若手たち。選手会長でも、キャプテンでもないのに…。



体重94kgの稲葉は、計5回、宙に舞った。

「でも、嬉しかったですね…」と稲葉もまんざらではない。

そして一言、「報われた気がしました」。



そんな日本ハムを見て、他のチームの選手は羨ましがる。

「チームだけじゃなくて、球団も誉められる。それが嬉しいんですよ。それがファイターズ(日本ハム)の良さなんでしょうね」と屈託のない稲葉。

球団に不平不満をこぼす選手が多い中、稲葉は本当に自分の球団、そしてチームを何よりの自慢にしているのだ。



「傲らず、偉ぶらず、手を抜かず」

引っ張ろうとしなくとも、そんな稲葉に皆ついてくる。

その姿は、栗原監督が期待した通りの「チームリーダー」であった。





ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 11/8号
「稲葉篤紀 自然体の40歳 リーダーシップは軽やかに」