2014年7月18日金曜日
ドイツの神の子、W杯決勝弾 [ゲッツェ]
ドイツ代表、史上最高の選手
「マリオ・ゲッツェ」は、そう讃えられてきた。
8歳のときからドルトムントに所属。香川真司とともにブンデスリーガ2連覇に貢献。A代表デビューは18歳という若さ。ブラジルW杯でも、まだ22歳であった。
今回の大会メンバー入りしたのは、レギュラーだったロイス(FW)が負傷したということもあったが、ゲッツェのパフォーマンスは練習中から良好であった。レーブ監督もそれを評価した。
そしてその期待どおり、W杯グループリーグ第2戦(ガーナ戦)、ゲッツェはやくもワールドカップ初ゴールを決めてみせた。
しかし、決勝トーナメント1回戦(アルジェリア戦)、監督に「不甲斐ないプレー」を見とがめられたゲッツェ。ハーフタイムでベンチに下げられた。
それ以降はサブにまわされたゲッツェ、準決勝(ブラジル戦)では出番さえ与えられなかった。
決勝戦を前にして、ゲッツェの市場価値は大会前の5,500万ユーロ(約75億円)から、700万ユーロ(9.6億円)も評価額を落としていた(『Transfermarkt』)。
そして迎えた決勝戦(アルゼンチン戦)
ゲッツェは当然のようにベンチ・スタートとなった。それでも彼は、出場の機会を虎視眈々と狙っていた。ばっちり散髪まで済ませて。
試合は膠着
——ドイツはペナルティエリアの外からシュートを打つのがやっとで、逆にアルゼンチンのカウンターで、メッシやイグアインにGK(ゴールキーパー)と1対1の場面をつくられてしまっていた。ドイツが「ボールを持たされている」という意味で、アルゼンチンが優位に立っていた(Number誌)。
前後半フルタイムの終了間際
後半43分、ついにゲッツェは夢の大舞台に送り出される。
「お前がメッシよりも良い選手だということを、世界中に見せつけてこい!」
レーブ監督は、ゲッツェをそう激励した。
レーブ監督は2006年にドイツ代表監督に就任して以来、不幸にも優勝というタイトルだけがなかった。ワールドカップでもユーロでも準決勝(ベスト4)まではいくものの、そこから先には手が届かなかった。それゆえレーブ率いるドイツ代表は「セミファイナル(準決勝)ジェネレーション」とも揶揄されていた。
その悲願の優勝へむけ、レーブ監督が最後の切り札と考えたのがゲッツェだった。
決着は延長戦にまでもつれこんでいった。
延長前半、身長186cmのミュラーが1トップの位置にいた。しかし後半からは、その位置に身長176cmのゲッツェが入った。それが指揮官レーブ、最後の大博打。ここ大一番で、ゲッツェにすべてを託した。
延長後半8分、レーブ監督がPK戦を覚悟したとき、ゲームは動いた。
シュールレが一気猛然にドリブルで駆け上がる。それに何かを感じたゲッツェが連動。一瞬うまれていたゴール前の空白地帯へゲッツェは飛び込んだ。
イメージどおりのクロスが、ゲッツェの胸元に来た。
——ゲッツェは、シュールレのクロスを胸でトラップ。身体を倒しながら、ボールが落ちてきたところを左足のボレーで叩くと、アルゼンチンのゴールネットが揺れた(Number誌)。
値千金の決勝ゴール
市場価値ではとても測れそうにない、美しい一撃だった。
それまで鉄壁を誇っていたアルゼンチンの守備網は、最後の最後、その一閃によって切り裂かれた。
試合の最終盤、メッシのFK(フリーキック)がゴールの外へ大きく外れた。アルゼンチンの「神の子」であるメッシは、最後の輝く機会を失った。
そしてレフェリーの笛が鳴った。
1対0
ドイツにとっては24年ぶり、4度目の優勝が決まった瞬間だった。
クローゼが、シュバインシュタイガーが、涙を流していた。
「セミファイナル(準決勝)ジェネレーション」たちにとって、優勝という最高の名誉がついに手に入ったのだ!
一方、決勝弾を決めたゲッツェは涼しげだった。
——表彰式でみんなが我先にとトロフィーに触れようとしていくのを横目に、ゲッツェはクールに喜びを表しただけだった(Number誌)。
ここ10年来の先輩らは、優勝をまえに何度も足踏みしてきた。しかし、このゲッツェばかりは、一発で頂点に立ったのだ。
いつもは厳しい表情のレーブ監督。
この日ばかりは、相好を崩して言った。
「ゲッツェは神の子なんだ!」
(了)
ソース:Number(ナンバー)857 W杯 ブラジル2014 The Final
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