2014年7月3日木曜日
弱点から武器へ。日本の新スクラム文化 [ラグビー]
日本ラグビー代表
過去、イタリアには5戦全敗していた。
ところが秩父宮でのイタリア戦(2014年6月21日)
残り5分で、日本は「26-23」とイタリアをリードしていた。
「絶対に勝て! 絶対に勝とう!」
秩父宮の観客1万3,816人は、まさに一丸となって日本代表にエールを叫んでいた。
その大きな思いは、ピッチに届いた。
——イタリア陣内でスクラムを得た日本は、低い姿勢で相手FW(フォワード)を押し込む。反則を得ると再びスクラム。大歓声のなか、ふたたびスクラムを押し、タイムアップのホーンが響くなかでまたも反則を勝ち取る。スタジアムが歓喜の雄叫びに包まれる。「勝った!!」(Number誌)
日本代表は、猛者ぞろいイタリアを撃破し、昨秋からテストマッチの連勝記録を10に伸ばした。そして、IRB(国際ラグビー評議会)が定める世界ランキングでは、過去最高となる10位へと歩を進めた。
勝利後、エディ・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)はこう言った。
「勝因はスクラム。それ以外に勝てる要素はなかった。スクラムに命をかけるイタリアに勝てたのは大きい」
思えば一昨年まで、日本のスクラムはむしろ弱点だった。2012年秋の欧州遠征では、ルーマニア、グルジアに粉砕されていた。
いったい何が変わったのか?
「スクラムの文化が変わりました」と、畠山健介(FW)は言う。
「以前の日本のスクラムはボールを出すだけだったけど、いまはメンタリティ(精神面)が変わりました。反則を取ろう、ペナルティトライを取ろうと。何よりフロントローだけじゃなく、バックファイブ(FW第2列と第3列)の押す意識が変わりました」
そうした文化を日本もたらしたのは、コーチとして迎えた元フランス代表のマルク・ダルマゾ。練習では、スクラムの上に乗ったりする「かなりの変人」だ。
——FW(フォワード)8人が一体になって組むスクラム構築に一貫して取り組んできた。8対8で組み合ったまま円を描くように動き、上下左右に動き、人を乗せて組み続けた。相手の動きへの対応と味方の連携を細かく反復し、修正を重ねてきた。すると昨年から改善の兆しが見え、アメリカ戦でもスクラムトライを2本奪うなど、いまや「日本の武器」になった(Number誌)。
ヘッドコーチのエディ・ジョーンズは自信をもってこう言う。
「たとえ、身体は小さくとも良いスクラムが組める、FW8人がそう信じれば強くなれる」
ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は、マインドセットの重要性を訴える。
「試合中、弱気は禁物。負の連鎖に陥りやすい。メンタル面で、日本人は完璧主義を排したほうがいい」
「テストマッチでは完璧なラグビーは必要ないし、最終的に勝てばいい。うまくいかないのが当たり前。準備したことが出来なかった時に、パニックにならないことが大切なんだ」
ラグビーの盛んなオーストラリア出身のジョーンズHC。現役時代は血気盛ん、流血がトレードマークだった。何事に対しても熱く、妥協がない。凡プレーには容赦しない。
「日本のラグビーを変えるには勝たなければならない。それはワールドカップで勝つことがすべてだ」
ラグビーW杯は、来年(2015年)9月にイングランドで開催される。
日本代表は、南アフリカ、スコットランド、サモア、アメリカの順で対戦する(プールB)。目標は3勝をあげて準々決勝に進むことだ。
ジョーンズHCは熱く語る。
「ラグビーを日本で最も人気のあるスポーツにする。
それが出来ない理由はない」
(了)
ソース:Number(ナンバー)コロンビア戦速報&ベスト16速報
名将の言葉「エディ・ジョーンズ」
「イタリア撃破! 日本ラグビー、進化の理由」
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