2013年10月4日金曜日
祝! 楽天リーグ初制覇! 「東北の底力」
無人の野を行くがごとき投手「田中将大(たなか・まさひろ)」楽天イーグルス。
9月13日、彼は連勝記録を更新するシーズン21勝目に挑み、そして勝った。
にも関わらず、田中はこう言い切った。「記録を伸ばすためにやっているのではありません。日本一になるためにやっているんです」
”特別に調子が良かったわけではない。それどころか、バッファローズ相手に、毎回のように走者を出した。8回を投げて8安打。普通の投手なら降板していそうな出来だった(Number誌)”
それでも田中は、ピンチになるとトップギアに入った。
”球速は140km台から150kmに乗り、スプリットも鋭さを増す。『走者は出しても点は許さない』という意志がボールにこもる(同誌)”
9月21日のファイターズ戦もまた、田中は連勝記録を更新した(シーズン22連勝)。
3回に先制を許したものの、「それ、マサヒロ(田中)が1点とられたぞ。ここから逆転だ」、そんな申し合わせでもしてあるかのように、攻撃陣は即座に逆転。そのまま勝利に直結した。
「マサヒロが投げているときは、リズムが良いので守りやすい」
楽天の野手は、そんなコメントをしていた。そうした守りの要は捕手「嶋基宏(しま・もとひろ)」。
「優勝チームには名捕手」という古くからのセオリー通り、嶋は、バッファローズ戦でもファイターズ戦でもピンチに陥るたびに”1球ごとに細かく守備位置の指示を出していた”。田中の投球が要求通りに来てくれるので、打球の予測がつきやすかったという。
7月下旬に単独首位に立ってから、楽天イーグルスにはいよいよゴールテープが近づいてきた。球団創設以来の悲願、初優勝が迫っていた。
2年前の東日本大震災に遭って誓った、東北の、そしてイーグルスの「底力」、それを万民に示す時がきていた。
9月26日、チーム初優勝のかかった西武ライオンズ戦。
絶対エース・田中将大がマウンドに立ったのは1点リードした9回。なんと、4年2ヶ月ぶりとなるリリーフだった。
「マサヒロを出したから大丈夫と思ったんだ」と星野監督は試合を振り返る。「が、よもやね」
よもや、エース田中は窮地に陥っていた。
ツーベース・ヒットを浴び、四球を与え、その後ワンアウトを取ったものの、ランナー2、3塁。
”長打が出れば、対戦相手ライオンズのサヨナラ勝ちが濃厚だ。優勝は決まらず、前例のない連勝記録にも終止符が打たれる(Number誌)”
「でも、走者が三塁に行ったとき、『やってくれる』とは思ったよ」
ピンチをむしろ喜んだ星野監督。ピンチになるほどに勝負強さを増す田中に対する信頼は絶大だった。
”その後の田中の投球は、ピンチがまるでフィナーレを盛り上げるための演出ではなかったかと思わせるほど圧倒的だった(Number誌)”
ストレート
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ライオンズの3番・栗山巧は、”黙ってストライクのコールを聞くだけだった(三振)”。
4番・浅村栄斗もまた、4球連続ストレートで追い込まれ、最後もストレート。浅村のバットが切ったのは空ばかり。
”8球すべてストレート。ライオンズの3番、4番が球種を読んでいても、バットに当てることすらできなかった(Number誌)”
7回宙に舞った星野監督。
”胴上げされた星野監督の表情は終始穏やかだった。激情の人らしからぬ温顔である(Number誌)”
チーム創設9年目、設立当初は1シーズンに38勝しかできなかった楽天イーグルスが、ついにリーグ制覇を果たした。
「絶対に見せましょう、野球の底力を」
捕手であり選手会長でもある嶋基宏は、震災直後、そう宣言していた。
「避難所を訪問したところ、皆さんから『おかえりなさい』と声を掛けていただき、涙を流しました。その時に、『何のために僕たちは闘うのか』、ハッキリしました。それは『誰かのために戦える人間は強い』ということです」
「生かされている僕たちは、前を向いて自分の人生を切り拓いていく使命があります。『ヒトの力』はこんなものではないはずです。一緒に感動を分かち合い、熱くなり、『ヒトの力』を信じて、明日からまた一緒に前を向いて歩きましょう。きっと、できるはずです(嶋基宏)」
(了)
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ソース:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 10/17号 [雑誌]
「田中将大と楽天イーグルス 大エースとともに見る夢」
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