2014年6月21日土曜日
PK戦とイングランド病 [サッカー]
PK(ペナルティーキック)は孤独だ。
チームメイトの輪から離れ、独りボールへと向かう。
その短くも長い歩みの間、キッカーは一人苦しんで考える。
——一見簡単に見えるが、その利害は狂おしいほど大きい。言い換えれば、PK戦は競技性やスキルよりも、むしろ「度胸」を試す戦いなのだ(『The Economist』誌)。
ドイツはPK戦で「無敵」だといわれる。
それは、過去のW杯でドイツは4度のPK戦、「全勝」しているからだ。チェコ人も強い。PK戦でゴールを外した選手は過去いない。
一方、イングランドは滅法弱い。
過去、W杯およびユーロのトーナメントで7度のPK戦、6敗を喫している。オランダも悲惨だ。5度のPK戦で4敗している。
PK戦の強弱を、どう説明すればよいのか?
「敗北は習慣化する」という人がいる。
過去のPK戦での失敗は、次のゴールを外す可能性が高い。まさにイングランドがかかっている病のように。
また、「個人主義的な国ほど弱い」という説もある。
自分の世間体を気にしすぎて、失敗したときに受けるであろうメディアからの無慈悲な批判を、ボールを蹴る前から恐れてしまうというのだ。
——イングランドの選手は、たいてい気負ってしまう。そして選手はつまずいたり、すねでボールを蹴るなど、「ゴールを外すまったく新しい方法を編み出す」とビルスベリー氏(オーストラリア・ディーキン大学)は指摘する(『The Economist』誌)。
この「エゴ説」に、ガイル・ヨルデット氏(ノルウェー・スポーツ科学大学)はうなずく。
「スター選手は、注目度の低い選手よりも失敗する可能性が高い」
まだヨルデット氏は、PK戦のキッカー同士の「感情の伝染」も指摘する。チームメイトがゴールを決めると、他の選手もやはり得点の可能性は高まり、逆に敵チームのそれは低くなるという。
ちなみに得点率の高い選手は、ゴールキーパーの動きを気にすることなく、蹴る前から決めていたところに蹴っているという。
また、両チームが交互に蹴るPK戦では、最初に蹴るチームが有利に展開する。というのも、後から蹴って巻き返すという任務は、よりストレスに満ちたものになるからだ。チームの敗退を防ぐキックを外す確率のほうがずっと高い。
諸説あれど、PKに絶対はない。
ただ、「ドイツ勢はさけろ」とは言えるかもしれない。
そして、できるなら「イングランドと対戦を」。
(了)
ソース:The Economist
イングランド病「サッカーPK戦と心理学」
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