2014年6月13日金曜日
突然の監督就任 [コートジボワール]
2014ブラジルW杯
日本、初戦の相手はコートジボワール
その監督を務めるラムシは、かつて現日本代表のザッケローニ監督の元でプレーしたことがある(当時インテル)。さらに元日本代表も中田英寿ともチームメイトだったという(当時パルマ)。
「顔を合わせるのは3年ぶりかな」
懐かしそうに、中田はラムシを迎えた。
「あの頃は、テレビの解説者をしてたよね。それがいきなりコートジボワールの代表監督だ。君の名前をみて驚いたよ」
ラムシは言う、「まさかライセンスを取るまえにオファーが来るとはね!」
それまでラムシは、監督の経験はおろか、クラブの助監督にすらなったことがなかった。
コートジボワールのサッカー協会からの電話は突然だった。
「今、パリにいるから会おう」
会長直々のお出ましで、5時間ほど話をして、その場を別れた。
次に連絡があったのは、代表戦の3日前。
会長は言った。「明日、一緒にコートジボワールに行こう」
なんと、その試合はW杯予選の初戦だった。
「僕は、選手や国民に望まれた監督ではなかった。若いうえに実績がないんだから、悲惨な状態だったよ。選手たちと顔を合わせたのも初めてだった」
そう言って、ラムシは苦笑する。
「アフリカではすべてが早急なんだよ。政治でも経済でも、明日はどうなるか分からないから、人々はどうしても目の前の結果を欲しがるんだ」
幸い、代表監督としての初試合は勝利した。
「負けたら、すぐに解雇されていただろうね(笑)」
ラムシに与えられた時間は、極めて少なかった。そんな貴重な時間のなか、彼は選手らに「何よりも規律(dicipline)を大事にしよう」とだけ伝えた。
「初めての試合前のミーティングでも、4分遅れてきた選手がいたから、僕はドアを開けなかった。バスに3分遅れた選手は、自家用車で追いかけてきたよ(笑)。だって、17時キックオフの試合が、選手を待って17時5分から始まることなんかないだろ。時間厳守。規律の徹底からチーム作りがはじまったんだ」
コートジボワールはアフリカ最強と謳われて久しい。ドログバ、ヤヤ・トゥーレ、ジェルビーニョ…。世界のビッグクラブで躍動する選手たちが代表に名を連ねている。
だが、代表戦となると皆「アフリカの習慣」に戻ってしまう。個人プレーに走ってしまうのだ。それが過去のW杯でグループリーグも突破できない原因の一つだった。
ラムシは言う、「コートジボワールには偉大な選手たちがいる。でも偉大な選手がいることと、偉大なチームであることは別なんだ。一人ひとりがチームのために働き、チームとしての規律(dicipline)を遵守する必要があるんだ」
中田はうなずく。「W杯予選を突破できたのは、選手たちが規律を守ってプレーしたからなんだな」
ラムシは言う、「その通り。僕が汗をかいてボールを奪っても、君がゴールしたら、みんなは『中田がいいプレーをした』と騒ぐだけだろ。『中田にボールを渡したラムシが良かった』とは言わない(笑)」
中田「僕だって、時には君のために汗をかいていたよ(笑)」
ラムシ「(笑)いずれにせよ、『誰かのために汗をかき続けられる選手がどれだけいるか』ということが、チームにとっては大切なことなんだ。コートジボワールは選手のポテンシャルは高いし、精神的にも強い。全選手がチームのために戦うことができれば、何が起きてもおかしくないと思うよ」
最後に、中田は聞いた。
「日本戦、特別な対策は考えてる?」
ラムシは笑う。
「言えないのは分かってるだろ(笑)。何試合かチェックしたけど、ザッケローニ監督は選手たちを熟知している印象があるね。彼はプロ意識が高く、選手の能力を疑うことをしない。選手たちは、この監督なら自分たちを高いところへ連れていってくれると信頼してプレーすることができるんじゃないかな。ただインテル時代、僕はなかなか試合に出してもらえなかったけどね(笑)」
中田「君は真面目で規律を重んじる。選手時代と変わらないな。日本戦ではコートジボワールを応援するわけにはいかないけど、いい試合になることを期待してるよ」
ラムシ「グループリーグは、日本が1位で、コートジボワールが2位通過でも構わないよ(笑)」
(了)
ソース:Number誌
コートジボワール監督「経験ゼロの知将は日本をどう見ているのか」
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